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翻刻
二四〇
ひます。
日出石門 は字日出にあつて、大平洋に面し怒濤岸を噛む処にあ
りますが、地理大系には次のやうな説明が加へられてあります。
伊良湖附近は海岸平野上に古生代岩石の丘陵が立ち其先端は浸蝕
されて伊良湖岬となり、次の突角附近が日出の石門となる地形学
上の対置海岸である。岸頭から石門や神島の眺望はよい。褶曲に
富んで奇岩の島と岩丘とを打寄せる怒濤が、断層断に沿ふて貫い
た洞穴が石門である。石門から灯台へ小径をたどる途中恋路浜は
風景一層佳である。
浜辺からの眺より、私は巌上から見下した景色が一段よいと思ひ
ます。私は遠慮なく川合の天然橋と共に三河の二大絶勝だと推称し
てよいと思ひます。
医幅寺 は大宇和地にありますが、此寺の大般若経は木曽義仲
の祐筆であつた太夫坊覚明の筆といはれてゐます。事実覚明の奥書
もあるが最後の奥書に正和五年六月十日比丘円澄【?】とあるので一筆写
経ではありません、又貞治何年かに補修したといふ奥書もあります
がとに角有名な経文です。
次回は市の西方を申上げて一通り御案内を終り、又足らない処や
申残したものなどを補つて見たいと思ひます。では今度はこれで
失礼致します。 草々
二四一