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翻刻
七二
これから西へ坂を下りて水路を渡ります。こゝは西新町で右側に
偉大な
常夜灯 がありませう。これは銘文にある通り文化二年に出来
たものです。これに就いて一つの物語りは、西三河挙母の石屋が註
文を受けて作り上げまして、船で関屋河岸まで運んで来ましたが註
文主がどうしても分らず、従つて代金を貰ふ事も出来ないし、持ち
帰るにも費用がかゝるといふので河岸に上げたまゝ帰りました。後
年それをこゝヘ建てたのですから、これには所有者がないといふ訳
です。
これから南へ行つて西に曲つた処に東口の総門があつたさうで地
形は其頃とは大変に変つてゐます。これを今一度南へ行くと東西
の通りがあり、これが鍛冶町で、以前は鍛冶職のもので軒を並べ
てゐた処です。その次が曲尺手町、呉服町と続きその先が問屋場
本陣などのあつた札木町ですが、今日は遅くなりましたので明日
御案内致す事としまして、電車が来ましたから、一先づ宿へ引上
げ御休息を願ふ事に致しませう。
以上で今日御案内したのが凡そ市街地の七分位で、あすはその残り
の三分と時間がありましたら牟呂方面を御案内する事に致します。
七三