翻刻
山林(さんりん)に生(しやう)ずる虫/故(ゆへ)に気(き)のこることを嫌(きら)ふなりゆへ
に国(くに)により野(の)蚕といふ所もあり
○大風(たいふう)の節(せつ)はあたらぬやうにはやく囲(かこひ)の外(そと)へ
こもをはるべし土砂(つちすな)餌(ゑ)に吹かゝらぬため又右に
教(おしゆ)る如(ごと)く風を嫌(きら)ふゆへなり
○風/当(あた)りすくなき日かげ高木の下などよし
并(ならびに)期桃(くるみ)山椒(さんしやう)若(わか)き松/杉(すぎ)桧(ひのき)類の下を嫌ふなり
また大柿(おほがき)小柿(こかき)榎(ゑのき)桜(さくら)の類/葉(は)にあくなく時々は
虫も付居(つきゐ)候気の下よし左(さ)にしるす心懸(こゝろがけ)肝要(かんよう)なり
飼葉(ゑば)に用(もちう)る木の事(こと)
○しらかし ○くぬぎ
【くぬぎの上に貼り紙をして筆で手書き】《割書:かしは■くすしらかしに|かきらす》
右(みぎ)の葉(は)を食(しよく)したる繭(まゆ)は悉(こと〴〵)く糸(いと)多(おほ)し
○かしは ○みつなら
右の葉(は)虫(むし)よく食し生長(せいちやう)はやくして繭(まゆ)和(やは)らか
にしてあつし糸目(いとめ)よし
○ならの木葉(きのは)
右に同じ但(たゞ)し此木(このき)は至(いたつて)わせなり又(また)出葉(では)和(やは)ら
かにしてよし弐度(にど)目/休後(やすみご)まで此(この)餌(ゑ)葉にてそだ
てべし右の外(ほか)国所(くにところ)により色々(いろ〳〵)の木葉(きのは)を食(くら)
ふ大略(たいりやく)右の葉(は)よし
土間(どま)飼立(かひたて)之(の)事(こと)
○船(ふね)の休(やすみ)《割書:三度目の|休の事也》過(すぎ)図(づ)の如(こと)く囲(かこひ)の内(うち)へ横(よこ)壱尺
【右帖欄外に手書き】胡桃