翻刻
【右頁】
ふねにのりあかひかはらをうちすきて
よとのわたりを見給へはみきはの
とりはかたよりてうはけのしもを
うちはらひさい中将のいにしへあつ
まへくたり給ひしにすみたか川のほとり
にてみやことりいさこととはんとな
かめけんふるさとしのふねをなき
てといまさらなかめ給ひけるも
おもひしられてあはれなりおとこ
山をふしおかみなむしやう八まん大
ほさつねかはくはあかてわかれし
中将殿わか君二たひみやこへわれ
らをかへしてみせ給へとてふしおかみ
【左頁】
給ふ中にもいつそや中将殿のしやう
けいにたち給ひし御おもかけいま
さらの心ちしておつるなみたははく
せんかうはんしはみなゆめのことし
うき身のつらさはかきりなし中将の
かの所へはしめてわたり給てちよ
ふる心ちこそすれとの給ひしこと
かす〳〵思ひいたしてたえこかれ又
わか君のこひしさはたとへんかたも
さらになしいたきまいらせていてし
そのおもかけいつの世にかはわするへき
かみならぬ身のかなしさはそれをか
きりとしらさりけるこそかなしけれ