翻刻
【右頁上段】
【枠内に題】
女 不(ふ)断(だん)身(み)持(もち)鑑(かゞみ)
◯髪(かみ)の結(ゆひ)やうのしな〳〵は兵庫(ひやうご)
吹(ふき)あげ角磐(つのあけ)わげ。くる〳〵丸わげ。
五だんわげ下(した)かみかうがい大嶋田(おほしまだ)小(こ)
嶋田(しまだ)當世(たうせい)やうのやつししまた抔(など)
とてさま〳〵の結(ゆひ)やう有(あり)と雖(いへども)
それ〳〵の風俗に似合たるやうに奥
さま【仮名の合字】女房家主嫁こしもとおゐま下
女のしなかたちをしたひ遊女たはれ
め茶や女の賎しく。ばし【派手で世間の目をひく】成すがたをまね
給ふべからずにかうがいはひきゝ方がよし
◯額(ひたい)のすり様(やう)も右に同じ万端(ばんたん)
のふうぞくしほらしくして目(め)にた
たぬをよしとす大額(おおひたい)小額(こひたい)丸びたい
くわたう口すりあげびたいみな人
この面躰(めんてい)の生(むま)れ付大がほ小かほ丸
がほ長き㒵(かほ)の姿(すがた)をはからひ作(つく)り給ふ
べしされ共いつのころよりはやり初
けん彼すりあげびたいとて額の
きはをあく迄すり上ひたいの程
を顔になし半かうずりのやうに
すり上たりあとのあを〳〵とみゆ
【左頁上段へ続く】
【右頁中段】
紫(むらさき)式部(しきぶ)は上東門(しやうとうもん)
ゐんの官女(くわんじよ)なり
はじめは藤(ふぢ)式部
と申けるが源氏(けんじ)
物(もの)がたりの若紫(わかむらさき)
の巻(まき)つとによろ
しく書(かき)ける故(ゆへ)此(この)
名(な)を得(ゑ)たりと
かや又は一 条院(でうゐん)の
御 乳母(ンめのと)の子(こ)なり
上東門院に奉(たてまつ)ら
しむる事(こと)とて
我(わが)ゆかりのもの
なり哀(あはれ)と思(おぼ)し
めせと申さしめ
給ふ故 此(この)名(な)あり
とぞ
◯千載集(せんざいしう)の哥《割書:ニ》
水鳥を
水のうへ
とやよそに
みん
我も
うきたる
世を
すごし
つゝ
【右頁下段】
【枠内に題】
本(ほん)朝(てう)女(ぢよ)中(ちう)和(わ)文(ぶん)八(はち)大(だい)家(か)
【水辺に立つ紫式部の図】
【左頁上段・右頁上段より続く】
るそうるさけれおこがましくすげ
なき姿(すがた)を好(この)む事(こと)にはあるなり
◯眉(まゆ)にしんを入るゝ事 霞(かすみ)の内(うち)に弓張(ゆみはり)
月のほの〴〵とうつろふがごとく引給ふ
べし墨(すみ)こく太(ふとき)は賤(いやしき)也◯白粉(おしろい)の事
因縁(ゐんゑん)淺(あさ)からず古(いにし)への美人(びじん)艶妍(ゑんけん)の粉(ふん)
黛(たい)にかる事あまねし只(たゞ)よき白粉(おしろい)
をうすくぬりて其跡(そのあと)を清(きよ)き絹(きぬ)にて
ぬぐひたるをよしとす粉(ふん)のすたらん事
をおしみてあつく賤(いやし)げなるは見ぐるし
◯お 歯黒(はくろ)といふは公家方(くげがた)の詞(ことば)なり
され共 殿上(てんじやう)の事をさうしにかね黒(くろ)
く眉(まゆ)ほそくきはめて上らうの御 姿(すがた)
などゝ書(かけ)りかね共申べくや御所方(ごしよがた)
にてふし水共ぬきすの水とも云(いふ)下
〳〵にてはつけがねといふとなり此 徳(とく)
はをつよくなす薬也 春(はる)の始(はじめ)のつけ
初(ぞめ)には先(まつ)地神(ぢじん)に手向(たむく)べし◯手水(てうづ)
の粉(こ)にもみぢまちりてよりあづきの
粉(こ)さゝげの粉(こ)緑豆粉(ぶんどうのこ)をつかふべしきめ
こまかに美敷(うつくしく)あせぼにさび出ず◯
髪(かみ)の油(あぶら)はくるみの油かみ黒(くろ)くしな
よく匂(にほ)ひ高(たか)からずしてよし
【左頁中段】
清少(せいせう)納云(なごん)は清原(きよはら)
の深養父(ふかやぶ)の曾孫(ひまご)
元輔(もとすけ)の子(こ)也一 条(でう)の
院(いんの)后宮(こうぐう)の女 房(ばう)也
枕双紙(まくらざうし)の作者(さくしや)也
老(をひ)の後(のち)は四国(しこく)に落(おち)
ぶれて有(あり)しよし
今(いま)にそのしるし
有(あり)とかや
◯千載集(せんざいしう)に
菩提(ぼだい)といふ鳥(てう)に
結縁(けちゑん)の講(かう)じける
時 聴聞(ちやうもん)にまふで
たりけるに人の
もとよりとく帰(かへ)れ
といひたりければ
つかはしける
もとめても
かゝる
蓮の
露を
をきて
うき
よにまたは
かへる
物かは
【左頁下段】
【清少納言が宮中からの使者に歌を渡している図】