東京学芸大学「学びと遊びの歴史」を翻刻!

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女源氏教訓鑑 - 翻刻

女源氏教訓鑑 - ページ 68

ページ: 68

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【右丁上段】 たてわたしてはなやかにうれしげなる こそ又あはれなれ◯何がしとかやいひし 世すて”人の。此世のほだしもたらぬ身に たゞ空の名残(なごり)のみぞおしきといひしこそ まことにさも覚えぬべけれ。よろづの事は 月見るにこそ慰(なぐさ)む物なれ。ある人の月計 おもしろき物はあらじといひしに又ひとり 露(つゆ)こそあはれなれとあらそひしこそ笑(をか) しけれ。折にふれば何かはあはれならざらん 月花は更(さら)なり風のみこそ人に心はつく めれ。岩(いわ)にくだけて清(きよ)く流(なが)るゝ。水のけ しきこそ時をもわかずめでたけれ。沅湘(けんしやう) 日夜(にちや)東(ひがし)に流(なが)れ去(さる)。愁人(しうじん)のためにとゞまる 事。しばらく時もせずといへる詩を見侍し こそ哀(あはれ)なりしが嵆康(けいがう)も山沢(さんたく)にあそびて 魚鳥(ぎよてう)を見ればこゝろたのしむといへり。 人とをく。水草きよき所にさまよひ ありきたるばかり。心なぐさむことは あらじ。何事もふるき世のみぞしたは しきものあらじとぞ思ひ侍るなり 【右丁下段】 【見出し】さわらび【源氏香の図 注①】【見出し語上部左右の角に飾り鉤かっこを付け全体を▢で囲む】 此巻は哥と詞とをもつて名 とする也。かほる廿四歳あげ まきの次(つぎ)の巻也。宮のたのみおほしめして。 念仏(ねんぶつ)などにもこもりてうせ給ふときまでも。 をはしましたりしひじりのばうよりは。 中の君のあね君にをくれ給ひて。たゞひとりおは しけるに。春のはじめに。わらびつく〴〵しを かごにいれて。たてまつるとて。ひじりの哥 〽君にとてあまたのはるをつみしかど。つねを わすれぬはつわらびなり。この心は。み(うぢ)やの をはしましし時の嘉例(かれい)にまいらする程(ほど)に。 それをわすれずして。いまもまいらするとの心。 あまたの春をつむとはわらびつく〴〵しなどの ゑん也◯姫君御かへし〽このはかは。たれにか見 せんなき人の。かたみにつめるみねのさわらび。 この心は。宮あね君などのましまさねばわが 身のかたみとみるばかりなりとのこゝろなり。 かたみとはかごのことをいへり。つらゆきの哥 行てみぬ。人もしのへとはるの野の。かたみに つめるわかななりけり。これもかごの事なり 【注① 図が違っている。正しくは右から三、四本目が上で繋がっていない。】 【左丁上段】 【見出し】月のから名(な)づくし【見出し語の上部左右の角に飾り鉤かっこを付け全体を▢で囲む。】 正月【上下左右の角に飾り鉤かっこを付け▢で囲む。以下月名の所は同じ。】青陽(せいやう)  端月(たんげつ)  陬月(むつき)【注②】 初春(しよしゆん) 太郎月(たらうづき) 二月  夾鐘(けうしやう) 如月(きさらき)  仲春(ちうしゆん)  令月(れいけつ) 陽中(やうちう) 三月  弥生(やよひ)  花月(くわけつ)  晩春(ばんしゆん) 桃月(たうげつ)  暮陽(ぼやう)  四月  麦秋(ばくしう) 孟夏(もうか)  梅月(ばいげつ)  純陽(じゆんやう)  卯月(うづき) 五月  星火(せいくわ)  皐月(さつき)  仲夏(ちうか) 景風(けいふう)  雨月(うげつ)  六月  葉月(ようげつ) 旦月(たんげつ)  林鐘(りんしやう)  季夏(きか)  水無月(みなづき) 七月  文月(ふみづき)  涼月(りやうげつ)  夷則(いぞく) 初秋(しよしう)  七夕月(たなはたつき) 八月  南呂(なんりよ) 清月(せいげつ)  迎寒(かうかん)【注④】  王秋(わうしう)  仲月(ちうげつ) 九月  菊月(きくづき)  無射(ふえき)  季秋(きしう) 暮秋(ぼしう)  長月(ながづき)  十月  陽月(やうげつ) 玄英(げんよう)  初冬(しよとう)  応鐘(おうしやう)  神無月(かみなつき) 十一月  霜月(さうげつ)【左ルビ:しもつき】 仲冬(ちうとう)  子月(しげつ) 長寒(ちやうかん)  陽復(やうふく)  十二月  臘月(らうげつ) 大呂(たいりよ)  極月(ごくげつ)  季冬(しはす)《割書:師|走》  弟月(をとつき)【左ルビ:けいげつ 注③】 元三(ぐはんざん) 節句(せつく) 端午(たんご) 七夕(たなばた) 名月(めいけつ) 【注② 日本語よみになっている。正しくは「スウゲツ」。】 【注③ 「けいげつ」は「桂月」「禊月」の字が考えられ、前者は陰暦八月、後者は陰暦三月のそれぞれ異称。なので、疑問。】 【注④ 「げいかん」とあるところ】 【左丁下段】  宿木(やどりき) やどり   きと おもひ  出(いで)   ずは この もと   の たび  ねも いかに  さびし からまし