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翻刻
【柱】古今巻六 〇六
に目出たかりければ上人あやしみて庵室(あんじつ)を出て
楽の声に付て行ければ博雅(はくが)の生るゝ所にいたり
にけり生れおはりて楽の声はとゞまりぬ上人他人
に語る事なし数日をへて又彼所へ向て其/生児(むまれしちこ)の母に此/瑞(ずい)
想(さう)を語(かた)り侍けるにとなん彼(かの)卿は子/息(そく)二人有けり一人は信
義/笛(つゑ)【ふえヵ】の上手也一人は信明(のふあきら)琵琶(ひわ)の上手也信義を双調(さうてう)
の君とそ号しける其/故(ゆへ)は式部卿ノ宮ノ時の管絃者伶人等を卒(そつ)
して河陽(かやう)に遊給けるに明月の夜暁にのぞみて
川/霧(きり)ふかきうちに双調 ̄ノ々/子(し)を吹て過る舟あり其
舟やう〳〵きたりちかづくをきくに誠に神妙なり