翻刻
【右丁】軍兵をちかつけて申けるはいた
はしや君はむくりか大将りやうさう
かはなつ矢を御きせなか【着背長=大将などの着る正式の大鎧の美称】の引合【ひきあわせ=鎧を着脱するための胴の合わせ目】
うけとめさせ給ひて候うす手【うすで(薄手)=軽い傷】
にて御座有し間さり共〳〵と
頼みをかけししるしもなく終に
むなしくならせ給ひて候御死
骸をもくか【くが=陸】にあけみたい所の御
めにかけたくは存候へとも諸神
諸仏をいはひたる御座舟にて有
間いたはしなから海底にしつめ
申て候さてあるへきにてあら
されは舟出せよと下知すれは
【左丁】
みかたのくんひやう【ぐんびょう=軍兵】ともは夢の心ち
して我をとらしとをしけす一ど
にほをあけかちをとれは天ちも
ひゝくはかりなりこのこゑともに
大臣殿は夢うちさまさせ給ひ
てたれかあるとめさるれとも
させ事申ものはなしこはいか
にと思召かつはと【かっぱと=がばと】おきさせ給ひ
てあたりを御らんありけれとも
人一人もなかりけりめしたる舟
を見給へはほをあけてこそ
をしいたせ