翻刻
【右丁】
血の付たる有いそきとりあけ
見給へはいにしへの人のことつて
に一首の哥にかくはかりとふ鳥
のあとはかりをはためく君うはの
空なる風のたよりをとかやうに
よませ給ひつゝさては此世に大
臣殿はいまたなからへ給ふそや是
こそ命の有しるしなれかみなき
かたにてあれはこそ木葉に物
をあそはしたれ硯とすみ筆
なけれはこそ血にて物をはあ
そはしたれいさや硯を参せて
おほしめされん事のはをくはしく
【左丁】
かゝせ申さんとてむらさきすゞ
り【紫色の石の硯。高級品とされる】ゆゑんのすみ【油煙の墨】かみ五かさねに
ふでまきそへみたいをはしめ
たてまつりそのかす〳〵の女房
たち我をとらしとふみを書
とりあつめたるまき物よしなき
わさとおほしたり女こゝろ程
ゆひかい【言甲斐】物はなし