翻刻
【右丁】
しかるへくは御労志に我を日本
の地につけてたへと仰けれは
舟人共か是を聞あら不便【ふびん】
の次第やなくし【なぐし(和し)=気軽な気持ち】する身にはなに
はにつき物うき事のおほいそや
人のうへともおもはねはたすけて
さらはもとらうする風のこゝろを
しらぬなり我人果報めてたく
は順風次第に出すへく有とも
うんつきはてなは猶しも遠く
放さるへし只果報をねかへ大
臣けにもと思召うしほをむすひて【両手で(水を)すくいあげて】
てうつとめされあらうらめしや
【左丁】
何とて日本の仏神は我をは
すてはて給ふらん観音経のめい
もんに入捨【「於」の誤記】大海けしこく風すい
こせんほうひうたらせつ【注①】■せう
はうへうたらせつの国におも
むくと我一人か祈念によつて本
地の岸へつけてたへと祈精申
させ給へは誠に仏神も不便【ふびん】に
おほしめさるゝか八大龍神波風
留にはかに順風吹きたり帆柱
のせみ口【柱の先端の綱や紐の取り付け口】には八大龍神こと〳〵く
面をならへ座せられたり船の
へさきにはふどうみやうわうの
【注① 『観世音部菩薩普門品第二十五』の御経の文言。「入於大海假使黒風吹其船舫飄堕羅刹」】
【注② これも観音経の文言だと思われますが、特定できませんでした】