翻刻
【右丁】
まことに神のちかひにやいきの
うらのつり人つりに沖へいてたるか
みなみの風にはなされて北の
沖へなかれ行大臣殿の御座
有けんかいか島に吹つくる舟人
ともは島かけにあかりいとゝ物うき
折節に大臣殿を見付申けう
かるいき物ありとてかなたこな
たへにけさりておちてさうなく
ちかつかす大臣殿は御らんして
あらくちおしや扨ははや我すかた
人間とはみえさりけるや何と成
行こと共やとて御涙にむせはせ
【左丁】
給へは涙をなかすていを見てちつ
と心かかうに成てさもあれ汝は
いかなるいき物そととへは大臣うれ
しく思召ありのまゝにかたらはや
とおほしめすかもしも別符方
の者にてもありとやせんと思
召偽かうそ仰ける是は一とせ
ゆりわか大臣殿む国へ打手に
御むきの時舟夫にさゝれてむ
かひたりし者なりしかふしき
に舟にのりをくれ此島に捨ら
れて候大臣殿御帰朝のゝちは
はや三年に成りと覚えたり