翻刻
【右丁】
大臣殿はたゝ今も立出なのり
て聞せはやとおほしめされけれ
ともしはしと思ふ所存にて時節
をまたせ給ふかくて其年も
うち暮あら玉の月にもなり
けれは九国のさいちやう【在庁=「在庁の官人」の略】ら弓
のとうをはしめ別符殿をいはふ
いたはしや大臣殿には御かほにも
御あし手にもさなから苔のむし
給へは苔丸と名付申矢とりの
やくをそさしにける大臣弓場
に立せ給ひこゝにて運をきは
めはやと思召あそこなるとのゝ
【左丁】
弓立のわるさよこゝなる殿の
をしてのふるふとさん〳〵に悪口
し給ふ別符此よし聞よりも
いつなんちか弓をいならふてさ
かしら【悪口、差出口】を申そもとかしくは一矢い
よ大臣殿は聞召いたる事は
候はねともあまりに人々の
いさせ給へるか見にくきほとに
申て候別符聞てさほと汝か
いぬ弓をさかしらを仕そぜひい
しと申さはうさ八幡も御しけん
あれ人手にはかくまし直に切
て捨へしとつく【疾っく】いよ【射よ】とせめかくる