翻刻
人に四肢(しし)あり天に炎冷(えんれい)あり人に寒熱(かんねつ)有
天に昼夜(ちうや)あり人に起臥(きぐわ)あり
天に五音(ごいん)あり人に五臓(ごぞう)有天に六(りく)
律(りつ)あり人に六腑(ろつふ)あり天に十干(じつかん)有
人に十指(じつし)あり天に十二 辰(とき)あり人に足(あし)の
十指と莖垂(きやうすい)【左側にも「インフグリ」とフリガナ】あり女は此二ツなし故に胞胎(はうたい)を
なす年十二月なれば人に十二 節(ふし)あり一年三百六
十日なれば人に三百六十の骨節(こつせつ)有或は地形成(ちかたなる)が故に人の
足形(あしかた)也地に十二経水(けいすい)有ば人に十二脛 脈(みやく)有地に高(かう)
山あり人に肩(かた)ひざあり
地に泉脈(せんみやく)【左側に振っている】あり人に気血(きけつ)あり
地に草木有人に毫毛(かうもう)
■(けん)筋(きん)あり
地に▲
▲砂石(しやせき)あり
人に骨肉(こつにく)あり
その餘(よ)天地の間(あひだ)た【振り仮名とダブっている】にあらゆる
もの人に具(そなは)らずといふものなし仏(ぶつ)【佛】
経(きやう)に説所(とくところ)の須弥山(しゆみせん)といへとも皆一身(みないつしん)に具(そなは)る也
既(すで)に須弥(しゆみ)の頂(いたゞき)に忉利天(とうりてん)ありといふも人の頂(いたゞき)の天 骨(こつ)なり
須弥(しゆみ)の圓生樹(ゑんせいしゆ)は頭(かしら)の圓(まろき)に生(しやう)する毛髪(もうはつ)也 帝釈(たいしやく)は額(ひたへ)喜見域(きけんしやう)は
眉毛(まゆげ)也これ喜(よろこ)びの眉(まゆ)を開(ひら)くのいひ也 善法堂(ぜんほふだう)は人 皆具足(みなくそく)する所の仏心也
須弥の四方に持 國増長広目多聞(ごくそうちやうくわうもくたもん)の四天 居住(きよぢう)すといふものまづ広【廣】目 両眼(りやうがん)也
多聞耳(たもんみゝ)也 増長鼻(ぞうちやうはな)也口は一切(いつさい)の食(しよく)を以(もつ)て一身の国を持(たも)つ則(すなはち)持国(ぢこく)也須弥の九山は肩肘胸(かたひぢむね)
腹陰膝背腰臀(はらいんひざせこししり)の九ツ也八 海(かい)は胸中(きやうちう)八識(はつしき)の湛水(たんすゐ)也四 州(はう)【「しう」とある所ですが「はう」に見える】は四肢(しし)なり又須弥の哥に
北は黄にといへるは黄黒(くわうこく)の夜(よる)のいろをさとす也東は
白くといへるは東方 黎明(しのゝめ)の
しらむ色をさすなり
南は青(あお)くといへるは白日 青(せい)
天昼(てんひる)の空(そら)をさす也西くれなゐは夕陽(せきやう)の
影(かげ)の赤(あか)きをさす也是又此 世界(せかい)の一昼夜(いつちうや)
なり蘇命(そめい) 路の山は日東山に出て西山
に入(いり)旦(あした)にまた東へ蘇命(よみがへる)也人又東
の陽(やう)に生れて西の陰(いん)に没(ぼつ)し東へめぐりて
蘇命(よみかへる)也是を以て省刻(みるとき)は嗚呼(あゝ)貴(たつと)き哉(かな)人天の道を修(しゆ)し地の理に
順(したが)はずんばあるべからず甲乙(キノヘキノト)丙丁(ヒノヘヒノト)戊己(ツチノヘツチノト)庚辛(カノヘカノト)壬癸(ミツノへミツノト)是天なりきのへは木の兄(あに)也
東方の春に位(くらゐ)し五常(ごじやう)の仁(じん)に配(はい)す十 幹(かん)【十干に同じ】の魁(さきがけ)なるを以て甲(はじめ)とも訓(よむ)也是 春(はる)の始(はじめ)なり木と世の
はしめ也きのとは木の弟(をと)也東方の春に位す是此 土(と)也ひのへは火の兄(あに)也南方の夏を司(つかさど)り五常の義に配す