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石川縣能登國鳳至郡櫛比村
曹洞宗大本山
諸嶽山總持寺真景
□□□後醍醐天皇元亨元年曹洞宗太□【祖カ】□□□□【弘徳圓明カ】
□□【國師カ】□【瑩カ】山紹瑾大和尚ノ開創ニ係□【リカ】爾来一宗□□
□□【本山カ】タリ抑モ當山ハ素ト諸嶽寺ト称シ行基菩薩
ノ草立ニシテ真言宗律院タリシヲ元亨元年四月
十八日《割書：自今五百七｜十九年前》ノ夜當時ノ住持定賢律師放光
菩薩ノ霊夢ヲ感シテ國師ヲ同國酒井保永光寺ヨ
リ拝請シ一山ノ寺領田荘及ヒ敷地山林等挙ケテ
國師ニ供養ス國師其請ニ應シテ殿堂伽藍ヲ改修
シ祝國開堂シテ以テ宗風ヲ宣揚セラル然ルニ其
道風高ク九重ノ雲表ニ達ス依テ 後醍醐天皇特
ニ勅使ヲ當國ニ下シテ佛法上ノ疑義ニ就キ十種
ノ勅問ヲ垂レサセラル國師ノ奏對意義明廓ニシ
テ響ノ聲ニ應スルガ如ク一々釋然タラサルハナ
シ茲ニ於テ天皇叡感斜ナラズ同年九月蔵人頭左
近衛中将藤原行房卿ニ命シテ總持寺ノ三大字ヲ
執筆セシメタル勅額ヲ賜ヒ勅願所大官寺ニ陛セ
ラル爰ニ於テ諸嶽寺ヲ改メテ總持寺ト称シ從前
ノ寺號ヲ以テ山号ト為ス翌元亨二年八月八日同
天皇日域無雙之禅苑曹洞出世之道場トシテ特賜
紫衣鎮護國祚ノ霊刹タルベキ詔勅ヲ賜ハル我國
ニ於テ曹洞ノ宗名アリ瑞世轉衣ノ式典アルハ實
ニ當山ヲ以テ権輿ト為ス爾来 後村上 後奈良
後陽成 後光明ノ四朝天皇各綸旨ヲ賜ハリテ
愈本山ノ規格ヲ確カメラル又太祖瑩山紹瑾大和
尚ヱハ正平九年 後村上天皇ハ勅使ヲ下シテ佛
慈禅師ノ謚号ヲ賜ヒ安永元年 後桃園天皇ハ
當山現住禅室ヲ召シテ参内セシメ宸翰ヲ垂レ
テ弘徳圓明國師ノ謚号ヲ賜フ亜ニ武門ノ帰崇
ハ足利将軍逓代ノ祈願所トシ□【抹消、テカ】三代鹿苑院
義満八代慈照院義政ノ二公各寺領ヲ定メラ
レ又前田加州藩祖以来ノ祈願所トシテ寺
領四百石ヲ附セラル又一山住持法燈相傳
ノ規式ニ就テハ開祖國師及ヒ二祖峩山禅
師ノ洪範ニ則リ山内ニ五院ヲ開キテ支派
高キ末派寺院ヲ輪番地ト定メ其住持ハ期
限ヲ畫シテ順次五院ニ昇住シ五院又互ニ
交代シテ本山現住ノ任ニ當ルノ制ナリシ
ヲ明治ノ初年大政ノ維新ト共ニ勅命ニ依
テ独住地ト為ル其独住第一世奕堂大和
尚ハ明治三年勅住シ特ニ勅シテ弘済慈
徳禅師ノ號ヲ賜ヒ尋テ同五年教導職大
教正ニ補セラレ独住第二世楳仙大和尚
ハ明治十三年特ニ内務卿ノ撰ニ依テ住
シ同ク勅シテ法雲普蓋禅師ノ号ヲ賜ヒ
教導職大教正ニホセラレタリ蓋シ遡
テ徳川幕府ノ頃ニ在テハ慶元以来
御朱印諸法度一宗ノ大本山トシ
テ宗門ヲ統治シ山内ノ諸政ハ
後見及ヒ二十餘ノ役寺并ニ
譜代々官等ヲシテ之ヲ行ハ
シメ一山勤務ノ緇素常ニ四
百五十名ヲ下ラズ殿堂ノ棟
数實ニ一百餘ヲ有シ寶物什
器古文書ノ類数百點ヲ蔵ス
維新以来輪住ノ拝シ及ヒ寺
領ノ上知ト共ニ一山ノ面目
ハ更ニ一変セシト雖トモ末泒
ノ扶護山法ノ整備ハ昔時ニ
比シテ大ニ革新ノ実ヲ呈シ
殿堂伽藍ノ営繕ヨリ寺産田
園ノ購入ニ至ルマデ一モ備
ハラザル所ナク常ニ一百名
ノ雲衲ヲ掛搭セシメ東京ニ
ハ其出張所ヲ設ケテ宗務施行
ノ局ニ當ラシム全国末泒一萬
三千ノ寺院ハ實ニ當山開祖ノ
法燈ヲ相承スルモノニ係ル其
門境風景ス優レタルモノ甚タ
多シ中ニ就テ諸嶽山十境 撰
アリ乃チ別欄 之ヲ掲ク
【別欄】
能登鳳至郡櫛比村
諸嶽山十境
高碓樵煙 慈雲夏雨
瑶池秋月 鶴峯夜雪
首山朝嵐 鬼渓弾流
南嶺殘照 龜阜遠帆
三松龍燈 定巖春苔
【下部に横書きで】
明治三十一年一月
■刻
■■名古屋光彰舘製版
■山写
是？立席？山携？