翻刻
【タイトル】
勧善懲悪 官許 錦画新聞
第三十号 投書 編集 時習舎
【本文】
潔白(けっぱく)なる行(おこな)ひは聞(きい)てもいさぎよきもの也大阪天満辺の
一 商人(あきんど)の手代かけ取にいきしに 何(いづ)方にてか五円札を受(うけ)取(とり)て帰(かへ)り支配人(しはいにん)に差出(さしだ)すに是(これ)は贋(にせ)札と
いはれ大きに驚(おどろ)き不調法(ぶちようほう)をつくのはんとて
其(その)贋(にせ)札を高麗橋四丁目岡田清藏
かたへ印紙(いんし)を買に持(もち)行しに折(おり)ふし
岡田の主人(あるじ)留主(るす)にて婦人(おんな)の事ゆへ
何心(なにこゝろ)なく贋(にせ)札を受取たりしが
かの手代はしすましたりと悦(よろ)びて
家(いへ)に帰(かへ)りて朋輩(ほうばい)に斯々(こふ〳〵と)
告(つぐ)るを主人(しゆじん)洩れ聞(きゝ)て大いに
怒り贋(にせ)札としりながら是を
用(もち)ふるは人をおとしいるゝぎ也
左様(さやう)の不人情(ふひとがら)なる事をなすは
以(もつて)の外(ほか)の事也 速(すみやか)に岡田氏に詫(わび)て取戻(とりもど)し来(きた)るべしと
言付(いつけ)られ手代その理(り)に伏(ふく)し岡田へ行しに又岡田かたも主人(あるじ)
帰(かへ)りて留守中(るすちう)に受取(うけとり)たる金札の贋(にせ)なるを見(み)てケ(か)様(やう)な物が
人手にわたらば難義(なんぎ)するものゝ出来(でけ)るもの也
とて速に引さき捨(すて)たり折からかの手代 来(きた)りて
主人の口上(かうじよう)を述(の)べ厚(あつ)く詫(わ)びて正札五円を出すに
岡田氏是を受(うけ)ず贋作を受取(うけとり)たるは我方(わがかた)の
誤(あやまり)也 既(すで)に如斯(かくのごとく)引さきたり替(かへ)金に不及(およばず)といふに
手代 感伏(かんふく)し家(いへ)に帰(かへ)り主人にかくと告(つぐ)るに主人
早速(さつそく)岡田へ来り手代の誤(あやま)りを謝(しや)して替金を出せども
岡田氏はさらにとらず互(たが)ひに押(おし)含 終(つい)に双方(そうほう)半 分(ぶん)の損(そん)と定(さだ)め
岡田氏へ金二円五十銭わたされしとぞ実(じつ)に互(たがい)の心かげは感心(かんしん)なものなり
新聞局 《割書:本町四丁目|藤井時習舎》
【紙面中央下】
画図
芳瀧
印