翻刻
大阪日々新聞
綿喜板
彫ユ九一
米相庭師(こめそうばし)のならいとて
夢(ゆめ)を信(しん)じ占(うらない)を頼(たの)み霊有(れいある)
といへば鰯(いわし)の頭(かしら)を拝(はい)す爰(こゝ)に
船場 辺(へん)の人仕合せ悪(あ)しく
堂嶌より帰(かへ)る後(うしろ)より廿
七八の女 声(こへ)かけて君(あなた)に一(ひとつ)の願有(ねがひあり)
我(われ)は狸(たぬき)にて候が二疋の子 狸(たぬき)
を取(とら)れ溝(みぞ)の側(かは)の医師(いし)にて
生胆(いきゝも)を薬(くすり)にせんとす哀(あわれ)
命(いのち)を助給(たすけたまは)らば君(きみ)の望(のぞ)み蔭(かげ)より
遂(とげ)しめんといふに男は此事 請(うけ)が【?】ひ立別(たちわか)れ次(つぎ)の日(ひ)医者(いし)を訪(と)ひ価(あたへ)七十 円(ゑん)に
買取り東馬場(ばんば)を聞(きゝ)し所【一+灬】へ持行(もちゆ)き親(おや)の□を叫(よ)へども来(きた)らぬゆへに
子狸(こたぬき)を放(はな)し帰路(かへり)に医師(いし)の門(かど)を見れば戸閉(とざし)て誰(たれ)も居(い)ぬ所から初て心に
当(あた)り隣家(りんか)で様子(ようす)を尋(たづ)ぬれば急(きう)に転居(やどがへ)なせ□□いふにカノ狸(たぬき)より
睾丸(きんたま)の釣上(つりあが)りたる大損(だいそん)は大 欲(よく)却て無慾(むよく)とは是等(これら)の説(こと)を
いふ成べし
大水堂 狸昇記
小信改二代
貞信画