翻刻
大阪日々新聞 二百五十三号
紀州周参見村
浜田(はまだ)某の娘(むすめ)まつは
本年十九才心 潔(いさぎよ)き
性質(せいしつ)にて風の
柳のなよやかに
あいてきらはぬ
さゝめ言(ごと)国に有
てもつくまなべ【注①】
尻(しり)の早(はや)くも大阪の
今木新田某へ奉公
するより又直になんば村久三良方へ
仲人なしの夫婦中 一重(ひとへ)いまでは肌(はだ)さむしと重(かさね)る
妻の幾重(いくへ)とも数(かづ)さへ定(さだ)めぬ
みそかお【注②】ばさながら売女(ばいぢよ)同やうの
しまつに其こと発覚して久三良もうとみはて
追出さんと思へどもさばかりにてはあきたらずと
近辺の若もの六七人もかたらいて浜さきより
小舟にひそみまつを呼出(よびだ)しさそい入五六丁
もこぎ出し久三良をはじめとしまつを
なぶりものにすまつは鬼がしまへもつれ
ゆかれんと人こゝちもなかりしに豈(あに)
はからんやおのがこのめる筋なれど
酒ずきも過(すご)せば二日よいのづゝう▲
▲もちずきも
過(すご)せば食もたれ
にてきのおもく
ついに千島新田 葭(よし)の中へ
追あげられて夜をあかし
わが身(み)をくやむは先にたゝず
柳桜記
婬【注③】婦まつ
彫福
川伝
【注① 滋賀県坂田郡米原町朝妻筑摩にある筑摩神社の祭礼に、女が関係した男の数だけかぶるという鍋。】
【注② 密男=「みそかおとこ」に同じ。密かに人の妻などのもとへ通う男。また夫のある妻がそのような男を持つこと。】
【注③ 「媱(ヨウ)」は「みめよい」の意で「婬(イン)」とは別字。媱と似ていることによる誤用。婬の意は「みだら」