翻刻
月夜(つきよ)に釜(かま)
とは抜(ぬけ)けた文句
の尻(しり)かあわず順慶町四丁目要嘉といふ
袋(ふくろ)物(もの)商(や)なるが発明製造(はつめいせいぞう)の品に思(おも)わく有て五尺の大釜(おゝかま)
一ツ求(もと)め工夫/最中(さいちう)明治八二月七日の出火に其家る類焼(るいしよう)して土蔵(くら)と
此大釜のみ跡(あと)に残るに板屁(いたひさし)くて置(おき)しに翌(よく)八日の夜/忍(しの)び来る者(もの)
あり番の僕(もの)/伺(うかが)ふに大釜に手をかけてアツ〳といふて取も得(ゑ)ず逃去(にげさ)る事
三夜に及(およ)ぶいつもアツアツと云て空(むな)しく立去る跡(あと)
にで考へるに此家炭団(たどん)を沢山買て此
釜hへ山盛(もり)に貯(たくわ)へ置しが出火の為(ため)に火と
なり上より灰になり底(そこ)に火気(こわつき)有るに
気が付たり盗人(ぬすびと)事を仕果(しはた)さず是や郭居(くわつきよ)か
孫(まご)か十六日の亡者(もうしや)嶋やの番頭(ばんと)か終(つい)に石川五右衛門
の末葉(まつよう)なりと新聞紙に一変一笑(いつはついしよう)せり