翻刻
の扉(とびら)を開(ひらき)たり。其間(そのあいだ)より見(み)やり
たれば。御簾(ぎよれん)を挑(かゝけ)て。焔王(ゑんわう)の玉座(ぎよくざ)と
見へて。浅草(あさくさ)の焔魔(ゑんま)よりは二割形(にわりがた)も
大 振(ふり)に見へさせ給ふ左右(さゆう)の座(ざ)には
でつしりと居(すわ)つてからは。みぢんも動(うごか)ぬ
ぶせう神(じん)罪人(ざいにん)水上帳(みづかけてう)と上書(うはがき)せし
大帳(だいてう)を扣(ひか)へ階下(かいか)には)見(み)る目(め)かく鼻(はな)
目(め)をいからし。鼻(はな)をぴこつかせ。牛の頭(かしら)
馬(むま)の頭(かしら)の者(もの)。黄木綿(きもめん)に。虎(とら)の皮(かは)の形(かた)
打(うつ)たる。褌(ふんどし)しめ踏馬御免(ふみむまごめん)と染貫(そめぬき)し
紺(こん)の腹当(はらあて)し。昼食(ひるめし)時分(じぶん)と見(み)へて
飼葉桶(かいばおけ)に首(くび)さし入(いれ)。修羅(しゆら)の太鼓(たいこ)を打(うつ)
たる有様(ありさま)。すさまじくも又(また)心地(こゝち)よし。
焔王(ゑんわう)遥(はるか)に見やり給ひ。汝(なんじ)娑婆(しやば)に在(あり)し