翻刻
十四人 一味(いちみ)の連書(れんしよ)に血判(けつはん)をすへ。京都(きやうと)へ登(のぼ)しけれ尊氏(たかうし)直(たゞ)■(?)。渡(わた)りに船(ふね)
を得(え)し心地(ここち)し。一義(いちぎ)にも及(およ)ばず隆(らう)を許(ゆる)し。頓(やか)て大軍(たいくん)さしむけん間。其時(そのとき)
内応(ないおう)し内外(うちと)より挟攻(はさみうち)。南方(なんほう)平(へい)■(きん)【鈞ヵ】の功(こう)を立なむ。莫大(はくたい)の恩賞(おんしやう)を与(あて)行(おこなは)んと
尊氏(たかうし)自筆(じひつ)の證文(しやうもん)執(しつ)事(し)師直(もろなふ)が添状(そえぜう)等さし下しけるにぞ。国人等(くにんとら)雀踊(こおどり)し
て怡悦(いえつ)し。内々(ない〳〵)集会(しうくわい)して商議(しやうぎ)しけるは。恩地左近(おんちさこん)死(し)せしと雖(いへとも)。正行(まさつら)は人中(しんちう)
の龍(りやう)と称(しやう)する程(ほど)の大将(たいしやう)にて。若冠(じやくくわん)ながら未前(みせん)を先知(せんち)し。希世(きせい)不側(ふしき)【測】の度(と)
量(りやう)有(あり)と聞(きけ)ば。先(まつ)此者(このもの)を除(のそか)ずんば大功(たいこう)の妨(さまたけ)と成(なる)べし。幸(さいは)ひ大島(おふしま)九郎は八(や)
幡林吉太(はたはやしきつだ)と水魚(すいきよ)の因(ちなみ)あれは。何卒(なにとぞ)渠(かれ)をも一味(いちみ)させ。正行(まさつら)を吉野(よしの)へ釣出(つりいた)し
て討(うち)とらば。大望(たいまう)成就(しやうじゆ)すべしと申ければ。浅智(せんち)短才(たんさい)の国人等(くにんどら)一応(いちおふ)の思慮(しりよ)
にも及(およ)はす。是(これ)窮(きはめ)て上策(じやうさく)なりと。早速(さつそく)京都(きやうと)へ使者(ししや)を登(のぼ)し。楠家(なんけ)の臣下(しんか?)
八幡林吉太(やはたばやしきつだ)をも御味方(おんみかた)に隆(くだ)らせ。俱々(とも〳〵)内応(ないおふ)させ候 半間(はんあいた)。御教書(ごきやうしよ)並(ならび)に執(しつ)
事(し)の添状(そへじやう)を賜(たまは)らんと。早(はや)一味(いちみ)合体(かつたい)せし様(よふ)に申遣しければ。尊氏(たかうし)悦ひ乞(こふ)に