翻刻
【右丁】
うやまひ恐(おそ)るべからず。かう楽屋(がくや)を
打明(うちあけ)て。はなして聞(きか)せるかはりには。
肥立(ひだち)て後(のち)の不養生(ふやうじやう)。毒断(どくだて)の
薯蕷(ながいも)は。忽(たちま)ちに鰻(うなぎ)と変(へん)じ。葛根(かつこん)
湯(たう)をあびるより。汗(あせ)をとるには仕舞(しまひ)
湯(ゆ)か。熱燗(あつがん)を引(ひつ)かけて。ぐつと寐(ね)る
のが早(はや)みちなぞと。手前勝手(てまへがつて)の
【左丁】
素人(しろうと)療治(りやうぢ)。しくじつたあとでは。
そりやこそ命(いのち)定(さだ)めだと。我等(われら)が
業(わざ)にいひたがる。馬鹿者(ばかもの)多(おほ)き世(よ)の
中(なか)なれば。くれ〴〵そこらを御推(ごすい)
察(さつ)。よろしき様(やう)に取(とり)なして。給(たま)
はれかしと鉢巻(はちまき)をとつて。さも
懇(ねんごろ)に頼(たの)むと思(おも)へば。引窓(ひきまど)のひま