翻刻
【右丁】
鳥(とり)を尋(たづ)ねあるきて聞(き)て時(とき)は。
郭公(ほとゝぎす)の初声(はつこゑ)も身(み)にしみておぼ
ゆれど。根岸(ねぎし)や木場(きば)の別荘(べつさう)に。
夜(よ)る昼(ひる)やまず鳴(なき)わたれば。あまり
なる迄(まで)耳(みゝ)やかましく。此里(このさと)過(す)ぎ
よと思(おも)ふ時(とき)もあるべし。元禄(げんろく)以前(いぜん)の
【鎌と○の絵=「かまわ」と言う意】ぬも。宝暦(ほうりやく)年中(ねんぢう)の市松染(いちまつぞめ)も。
【左丁】
年(とし)を経(へ)て染出(そめいだ)せば。石畳(いしだゝみ)のすみ
からすみまでもてはやして。花(はな)がつみの
鼻(はな)をひしぎ。成田屋(なりたや)が案(あん)じのやうに
嬉(うれ)しがり。御娘子(おむすめご)や御新造(ごしんざう)の。はれ
着(ぎ)の模様(もやう)に染(そめ)させても。親御(おやご)もかま
はぬ御亭主(ごていしゆ)も。かまはぬ程(ほど)にはやり
たり。実(げに)浮気(うはき)なる人(ひと)ごゝろ。