翻刻
を組(くみ)しき首(くび)を取てさし上たり嗚呼(あゝ)遠藤(ゑんどう)忠勇(ちうゆう)才略(さいりやく)兼(かね)備(そな)へし武士(ぶし)也
しに数度(すど)の諫言(かんげん)用ひられず空(むな)しく姉川(あねがは)の露(つゆ)と消(きへ)たりしは痛(いた)ましか
りし次第(しだい)也此竹中久作は竹中半兵衛 重治(しげはる)が弟なりしが常々(つね〳〵)人に語(かた)り
て申けるは浅井の臣(しん)遠藤喜右衛門は天晴(あつはれ)功(こう)の武士(ものゝふ)なり我(われ)必(かなら)ず彼(かれ)が首(くび)を
取(とる)べしといひけるが果(はた)してかくのごとく也ければ剛(かう)の者の志(こゝろざし)はおそろしき物
なりけりと人々 感(かん)じあへりける
横山(よこやま)落城(らくじやう)
浅井(あさい)朝倉(あさくら)の両勢(りやうぜい)信長の為(ため)に討崩(うちくず)され朝倉は本国へ浅井勢は小谷(こだに)の城
へ引取ければ横(よこ)山の城に籠(こもり)し大 野木(のき)佐渡守(さどかみ)野村 肥後守(ひごのかみ)三田(みた)村 左衛門尉(さえもんのぜう)
等(ら)今は後詰(ごづめ)の勢もなく力(ちから)を落(おと)しこたへがたくぞみへにける此城を押(をさ)への大将は
三十郎 信包(のぶかね)丹羽(には)五郎左衛門 不破(ふは)河内守(かはちのかみ)等(ら)三千 余(よ)人にて囲(かこみ)ける木下