翻刻
【右丁】
下野(しもつけ)足尾山中(あしをさんちう)及(をよひ)信州(しんしう)勢州(せいしう)経(けう)が峯(みな)#1にあり春月(はる)宿根(ふるね)より生(せう)す葉(は)は烏頭(うづ)《割書:とりか|ぶと》に
似(に)て光沢(つや)なく山生(さんせい)の毛莨(もうごん)に似(に)て大(おほひに)微(すこし)毛茸(け)ありて白斑点(しろきまだら)あり秋月(あき)高(たか)さ二三尺
穂(ほ)をなして花(はな)あり淡紫色(うすむらさきいろ)形(かたち)伶人(れいじん)の如(こと)し故(ゆえ)に名(な)つく後(のち)実(み)を結(むす)ぶ形(かたち)附子(ぶし)と同(おな)じ又(また)
享保年中(けうほねんぢう)朝鮮(てうせん)より秦芁(しんげう)と名(な)づけ渡(わた)せし物(もの)は此(この)黄白花(うすきいろのはな)なるものなり根(ね)の形(かたち)は舶来(はくらい)
の秦芁(しんげう)の如(ごと)くなれども実(み)は牛扁(ぎうへん)なり二種(にしゆ)ともに此根(このね)は羅紋(らもん)絞紏(こうきう)#2をなすこと秦芁(しんげう)の如(こと)
し味(あじわ)ひ苦(にが)し
【左丁】
虱建草(しつけんさう)《割書:附|録》 みづとらのを
丹波(たんば)の宇津根(うつね)及(をよひ)越後(ゑちご)の水地(すいち)にあり夏月(なつ)実(み)より生(せう)す葉(は)細(ほそ)く長(なか)く一莭(ひとふし)#3に四葉(しやう)対生(たいせい)して
形(かたち)蓬子菜(ほうしさい)《割書:かはら|まつば》に似(に)て軟(やはらか)なり秋月(あき)茎(くき)高(たかさ)一尺 許(はかり)末(すへ)穂(ほ)になる穂(ほ)長(なか)さ一二寸 形状(かたち)地楡(ぢゆ)《割書:われも|かう》に似(に)
て細(ほそ)く細小(さいせう)の淡紫花(うすむらさきのはな)あり此物(このもの)越後(ゑちこ)の土人(としん)採(とり)て乾(かわか)し煎(せん)じて蟣虱(しらみ)を生(せう)したる衣服(いふく)を洗(あら)ふに
能(よく)く#4死(し)す因(よつ)て今(いま)是(これ)を充(みつ)瑯瑘代酔編(ろうやだいすいへん)#5に《振り仮名:有_レ草|くさあり》《振り仮名:生_二山足湿処_一|さんそくしつしよにせうず》葉(は)《振り仮名:如_二百合_一|ひやくごうのごとく》対生(たいせい)独茎(どくけい)茎(くき)微(すこし)赤(あかく)
高(たかさ)一二 尺(しやく)《振り仮名:名_二虱建草_一|しつけんさうとなづく》能(よく)《振り仮名:去_二蟣虱_一|きしつをさる》と云(いふ)
【版心の中央】虱建草