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【欄外上側】
ステキめツポーおもしろイ
大地震番附
【欄外右側】
乞食曰く避難民です 《割書:著 作 者|まなずや主人》 《割書:発行兼|印刷人》大野栄之助 名古屋市中区古郷町三十番地
【欄外左側】
上野から見た武蔵野原ハヤリ出した枯すゝき節 一枚《割書:定|価》金拾銭也焉 《割書:大正十三年八月二十六日|御届同二十八日発行》
【中央の書き入れ】
御 大正十二年九月一日午 震源地北緯 《割書:地震めが|人をしらみと》 常陸要め石
蒙 前十一時五拾八分二十三秒 卅五度四 《割書: 間違へて|つぶして見たり》 勧進元
免 《割書: 焼いても見たり| 》 戒厳司令部
【右側一段目】
偉勲一等賞 無線電信
惜まるる 三殿下
《割書:ポキツト|折れた浅草 》 十二階
《割書:グヅ〴〵|云やあがる 》 火災保険
《割書:本所被服|廠跡死者》 三万五千
《割書:首がおつ| こちた》 上野大仏
《割書:馬鹿に儲|けた上野の 》 望遠鏡貸
《割書:救済支出|に決した》 五億余万円
《割書:効労の魁|軍 用》 飛行機
【右側二段目】
無事息才の三越の 獅 子
新規に出来た 金庫あけ業
《割書:母校を奪はれ| て泣く》 学童十五万
昔に返つた 箱根八里
武士道の権化 山内本所署長
数丈の地割れ 宮 城 前
殆んど全滅 熱海箱ね
《割書:のりのついて| 居らぬ》 切手と印紙
焼灰が飛んで 常陸水戸迄
気持のいゝ暴利 取締令
悪い事云ひ当てる 大本教
【右側三段目】
泣く子に夫れツ地震
ヒヨツコリ合つた鴈と仁左
朝飯もらふに昼までかゝり
殖へたマスクやと絵端書や
根底から破産した化学やはん
側杖くつた伊藤野枝
地団太ふんた大森博士【大森房吉】
●●へ女●●●●●湯●●
鮮人に似たのが抑々不運
三越の焼跡を探す男かな
ペロリと東京ナメちまい
此所小便無用町のまん中
御面相はバラツク式だネー
田舎稼ぎに出る芸妓
【右側四段目】
火保の契約二十三万
震災前の東京住民二百五十万
其後は概算百二十万
政府を相手に宗一【橘宗一】の母者人
何が当るやらかん婦白蓮
安政地震から今日迄六十八年目
ピクツともせぬ帝国ホテル
焼けた南北二里二十八町
潰された父の腕を鋸つて助けた息子
妙な名前鴨志田甘粕
名古屋へ移り申候回向院
火元実に百三十余ヶ所
恐ろしかつた竜巻
あんまり効力のない金庫
【左側一段目】
《割書:救援第一者|北 米 》 合衆国
あわれ 大杉栄
《割書:第一番に| 焼けた 》 警視庁
《割書:気持のいい| 郵便貯金 》 非常払ひ
《割書:死者千人余| の吉原 》 公園の池
《割書:訪ね人の広|告になつた 》 西郷の像
《割書:頼み手のカ|イモクない 》 美術家連
《割書:震災に依る|日本の損害 》 九十二億余万円
《割書:行列は|被服廠から 》 地獄まで
【左側二段目】
焼け死んだ 花屋敷の象
《割書:辻々に居る| 自転車バ【パ】ンク 》 直しや
《割書:帝大丈で焼けた| 書 籍 》 七十六万
急造りの乗り合 荷馬車
《割書:退かずに火を防| いだ住友 》 支店の課長
五尺下つた 横浜の地面
《割書:京浜で焼けた| 電話機 》 三十二万
《割書:御利益あら| た か 》 浅草観世音
《割書:東京の火事が| 見へた 》 岩代福島
《割書:一尺五十円に| 売れた 》 活動ヒルム
《割書:乞食がなくな|つた筈みんな 》 乞食になり
【左側三段目】
飴ン棒に曲つた鉄道
仰向いてへそを出した丸善書店
焼失戸数四十五万
大活動をして缶詰様々
誰かゝ食つたらしい公園の鴨
屋根迄のせた避難汽車
四日の朝ツイタ慰問袋
●●●へどしどし長唄の師匠
焼死人口六万八千
林女史の廃娼運動
大正の大江戸へ草ン靴がけ
とう写ずりの官報教科書
儲けた事は儲けたが懲役二年
自警団長宛然巡査矣
【左側四段目】
おれ丈は生きたぞよ火吹く廠
火事どろ地震どろ泣つ面に蜂
九月二日随分早いすいとん売
二度目のビツクリ焼残り爆破
将に大工五円日傭三円也
九月七日流言火語取締令出づ
ウソだつた首相の死
男ばかりで●●●泣●●●
ハイ御承知の通り支払延期令
恐れ多くも御救助金
篠つく同情欧米七ヶ国
大地は裂けて人を呑む
是れが昨日の皇都かなア