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―第七章 市の経済及税務 一三二
明治維新後の租税制度は、大体に於て徳川幕府の制度を承継せり。明治元年八月の布告により、租税は一般に姑く旧法
を襲用すべきを令し、幕府の三種税、即ち第一地租(穫米納)、第二小物成(産物貢納の営業雑税)、第三課役(道路其
他工作に要する労役米銭納の雑役)を以て、中央及び地方官庁の財源となせり。明治四年七月廃藩置県となるに及び、全
国画一の制度を布くに至りたりといへども、種々の名称の下に依然各地不同の課税をなし、税制の統一及び国税地方税の
別の如き、之を見ること能はざりしなり。
当時国庫租税の最も重きをなせるは地租にして、五公五民より八公二民に至る各種不同の負担各地に行はれしを以て、
明治六年七月太政官布告第二百七十二号を以て地租条例を改正し、根本的の整理を行ひ、米納を金納に、段別制を地価制
とし、四公六民の原則に依り、地価百分の三を以て正租即ち国税とし、本税三分の一を府県税となせり。最れ土地に対す
る課税につき、国税県税の区別を定められたる始めなり。
明治七年布告七号を以て、僕婢馬車人車等諸税の歩増、並に劇場芸妓等諸税の各府県限り収入せるものは、自今賦金と
なすの制を設け、明治八年二月布告第二十三号を以て、其種目の大部分を廃し、其他旧時の小物成中、酒類税、醤油税、
船税、牛馬売買税、蚕糸税、銃猟税、鉱山税、碇泊税の九種を国税に更定し、更に国税として専売特許税、僕婢税、馬車
税、人力車税、駕籠税、乗馬税、遊船税、証券印紙税、醤麹税、諸会社税、車税、煙草税、度量衡税の十三種を起せり。
此国税は爾后時に臨み廃止せられたるものありしが、大部分は明治二十九年の雑税整理に依つて、営業税法施行に至るま
で存続せり。明治八年九月布告第百四十号を以て国税府県税の区別を明にし、明治十一年七月布告第十九号を以て地方税
規則を発布し、府県財政と区町村財政とを分離し、府県は(一)地租五分の一以内、(二)営業税並雑種税、(三)戸数割の三種に限
定し、仝年十二月布告第三十九号を以て、県税営業税並に雑種税の種類及制限を定め、明治十三年四月布告第十七号を以
て、県税営業税の営業を商業工業(工業税創設)の二種に改正し、現今に至れり。其間明治十四年二月布告第五号、仝十
五年一月布告第二号を以て部分的小改正ありしも、大綱に関係なし。
明治十三年太政官布告第十六号に、地方税とは単に府県税のみを指称せり。当時市町村は協議費を以て支弁すべく、地
方税の限に非ずとせられたり。是市町村は基本財産を維持するの義務を負ひ、其の所要経常費は此の財源より生ずる果実
其の他雑収入を以て支弁するを原則とし、市町村税は単に之を補充するの性質を有するに過ぎざるも、府県は府県税を以
て支弁するを原則とし、其の趣大に異なりしを以てなり。然るに明治二十一年四月法律第一号を以て市町村制を発布し、
法律上明に之を自治法人とし、同時に市町村へ課税権を認め、其の税目は国税、県税の附加税、直接又は間接の特別税と
なせり。
◇地租附加税 明治八年十月布告第百五十六号を以て区費本税三分の一の制を設く。明治十年減租の聖詔に依り
仝年一月布告第一号を以て地租本税を地価百分の二個半となし、附加税は本税の五分の一となす。明治十年布告第二十五
号を以て県税は本税三分の一、市町村税は本税七分の一の制を設く。其後多少の変遷を経て、地租は宅地地価百分の二個
半、田畑百分の四個半、(大正三年法律第十八号改正)其他の土地百分の五個半、県税は本税一円につき宅地百分の三十
四、其他の土地百分の八十三、市町村税は本税一円に対し、宅地百分の二十八、其の他の土地百分の六十六とし、大正九
年八月法律第三十七号を以て地方税制限法を設け現今に至れり。
◇所得税附加税 明治二十一年法律第一号市町村制に依り、市町村に於て、所得税附加税の課税を認められ市町村
税は本税百分の五十までを課し得るの制なりしが、明治四十一年法律第三十七号を以て県税は本税百分の十(創設)、市村町
税は本税百分の三十五と改正して、県市税併課の途を啓き、其の後多少の変遷を経て、大正九年八月法律三十七号の地方
―第七章 市の経済及税務 一三三