翻刻
【右丁】
ものかは知(し)らず只(たゞ)性(せう)能(よ)き種(たね)のみ出(いで)性(せう)悪(あし)きは咸(みな)寒気(かんき)に中(あた)りて死(し)する
ようにとの手段(しゆだん)のみ歟(か)下作(げさく)なるべしや悪(あし)き種(たね)傷(いた)めば倶(とも)に能(よ)き種(たね)も
傷(いた)むなり武玉川(ぶのたまがは)の里(さと)上(か)み稲毛領等(いなげれうなど)には極(ごく)上の絲繭(いとまゆ)も出来(でき)また
近年(きんねん)蚕種(こたね)極(ごく)上/物(もの)多分(たぶん)の土産(とさん)あれども寒水(かんすい)に浸(つけ)るに及(およば)ず
尤種性にもよる水に浸(ひた)すは潤(うるほ)ひと㔟(せい)を添(そゆ)る為(ため)也と云ふ
養蚕(ようさん)諸道具(しよどうぐ)の事
道具(どうぐ)は図(づ)のごとくして悉(こと〴〵)く冬(ふゆ)の内(うち)に用意(ようい)為(す)べし又(また)繭(まゆ)作(つくら)する時(とき)つか
う藁(わら)の類(るい)柴薪(しばたきゞ)に至(いた)るまで前方(まへかた)に用意(ようい)して濕気(しつけ)無(な)き様(よう)乾(かわ)
燥(か)し置(おく)べし
【左丁】
寒暖計(かんだんけい)の図(づ)《割書:左(さ)の図(づ)目(め)もりのしたるは板(いた)にて真中(まなか)に釣(つ)り|かけたるはギヤマンの管(くだ)にて下(し)もの玉(たま)の中(なか)に水銀(みづかね)》
《割書:入(い)れてあり管(くだ)の中(なか)に黒筋(くろすじ)を引(ひき)たるは水銀(みづかね)なり此/汞(みづかね)暖気(だんき)には上(のぼ)り冷気(れいき)には|下(さが)る尋常(よのつね)の大暑(あつさ)には八九十度もし汞(みづかね)百/度余(どよ)に上(のぼ)る程の暑(あつさ)には人命にも及といひ傳へり》
【寒暖計の図】
《割書: 血温 暑熱 温暖 中和 氷點 嚴寒》
《割書:百 九十 八十 七十 六十 五十 四十 三十 二十 十|》
《割書:大|暑》《割書:《割書:立|秋》|《割書:小|暑》》《割書:《割書:処|暑》|《割書:夏|至》》《割書:《割書:白|露》|《割書:芒|種》》《割書:《割書:秋|分》|《割書:小|滿》》《割書:《割書:寒|露》|《割書:立|夏》》《割書:《割書:霜|降》|《割書:穀|雨》》《割書:《割書:立|冬》|《割書:清|明》》《割書:《割書:小|雪》|《割書:春|分》》《割書:《割書:大|雪》|《割書:啓|蟄》》《割書:《割書:冬|至》|《割書:雨|水》》《割書:《割書:小|寒》《割書:立|春》》《割書:大|寒》
《割書:右/寒暖計(かんだんけい)蚕(かいこ)に見合(みあわす)る度数(どすう)を記(しる)す》 《割書:蚕/生(うま)れ出(いづ)る頃(ころ)は六十五度を|中と極む》 《割書:同/獅子(しし)の居起(いおき)の頃(ころ)は六十|八度を中と極む》
《割書:同/鷹(たか)の居起(いをき)の頃は七十度/餘(よ)|を中と極む》 《割書:同/舩(ふな)の居起頃は七十二度を|中と極む》 《割書:同/庭(にわ)の居起頃は七十五六|度を中と極む》
《割書:桒拵幷振掛喰す篩初め|二日程は一分四方の目日増に|段々大目を遣二分三分|四分五分六分七分八分九分|一寸数多有がよし|》【道具の図】