翻刻
奥筋(おくすじ)の鉄道(てつどう)開(ひら)けなハ猶一層(なおいつそう)の盛況(せいきょう)を見(み)る
に至(いた)るべし此地(このち)三四年前迄(さんよねんまへまで)ハ運輸(うんゆ)の不便(ふべん)
なるか故(ゆゑ)に諸品(しょしな)の價(あたい)|意外(ゐぐわい)に高(たか)かりしか道(どう)
路(ろ)開鑿(かいさく)の功(こう)成(な)りてより物價(ぶつか)頓(にわか)に低落(ていらく)して
大(おおい)に浴客(よくかく)の費用(ひよう)を減(げん)するに至(いた)れりと誠(まこと)に
是(これ)山中(さんちゅう)の景気(けいき)を増(ます)のミならす入浴(にうよく)の人(ひと)も
容易(たやす)く宿痾(しゅくあ)を洗(あら)ふべし其(その)一日の費用(ひよう)大抵(たいてい)
左(さ)の如(ごと)し但(’たゝし)|年々(とし〱)|樓主等(ろうしゅら)共議(きょうぎ)の上(うへ)|之(これ)を定(さだ)む
一|旅籠(はたご) 廿五錢以下拾貮錢迄
一|中食(ちゅうじき) 拾錢以下四錢迄
酒(さけ)ハ旅籠(はたご)の外(ほか)なれと割(わり)より安(やす)く上酒(しやうしゅ)|壱合(いちごう)
貮錢(にせん)内外(うちそと)又|自(みつか)ら炊(かし)く者(もの)一日一人の入費(にうひ)
一|宿料(しゅくりょう) 四錢五厘
一|蒲団(ふとん) 壱枚貮錢 《割書:是ハ借りなれハ|拂ふに及ハす》
一|湯錢(ゆせん) 五厘
一|薪(まき)壱束 五厘《割書:壱束にて一人分の|飯汁を炊くに足る》