翻刻
言(げん)を待(また)す予(よ)本年(ほんねん)此(この)地(ち)に遊(あそ)び山中(さんちやう)の繁昌(はんじやう)を見(み)
て自謂(おもひ)らく設令(たとひ)山川(さんせん)の勝(しやう)温泉(おんせん)の功(こう)あるも道(どう)
路(ろ)洞通(どうつう)せざれは何(なん)ぞ今日(こんにち)の繁昌(はんじやう)を致(いた)さんや
因(よつ)て聊(いさゝ)か山中(さんちやう)の景況(ありさま)を記(き)して塩原(しほばら)繁昌(はんじやう)記(き)と
題(だい)し以(もつ)て遊客(ゆうかく)午睡(ひるね)の一粲(いつさん)に供(きやう)す
明治十八年初秋 編者誌
塩原繁昌記
磐城国 錦 石秋編輯
塩原(しほばら)は塩谷(しほや)郡(こほり)の北端(ほくたん)にありて東西(とうさい)五里(こり)許(ばか)り
南北(なんほく)四里(より)許(ばか)り上(かみ)中(なか)下(しも)及(およひ)湯元(ゆもと)塩原(しほばら)の四箇村(しかそん)に
分(わか)ち家数(かすう)百(ひゃく)三十余(よ)戸(こ)連山(れんざん)東西(とうざい)に亘(わた)り箒川(はゝきかは)は
村(むら)の中央(ちゆうわう)を流(なか)れ下塩原(しもしほばら)に至(いた)り鹿俣川(かのまたかは)を合(あは)せ
東流(とうりう)して中川(なかかは)に入(い)る温泉(おんせん)の所在(しよざい)は下塩原(しもしほばら)の
部内(ぶなへ)大網(おほあみ)。福渡戸(ふくわた)。塩竈(しおかま)。塩湯(しおのゆ)。畑下戸(はたをり)。門前(もんぜん)。古町(ふるまち)。外(ほか)