みんなで翻刻ver1

コレクション: STAGE1

塩原繁昌記 全 - 翻刻

塩原繁昌記 全 - ページ 8

ページ: 8

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○大網(おおあみ) 客楼(かくろう)一棟(ひとむね)あるのみ宏壮(こうさう)ならざるも 新築(しんちく)の二階造(にかいつく)りにて見苦(みくる)しからす浴槽(ゆふね)は 二坪川(ふたつぼかは)の辺(ほとり)にありて二 町余(ちやうよ)の急坂(きうはん)を降(くた)る 所(ところ)なれは御苦労(ごくらう)至極(しごく)なり功能(こうのう)は癬疥瘡毒(しつかき) 等(とか)に尤(もつとも)宜(よろ)しと聞(き)けり此(この)上流(みすかみ)に区々(くゝ)竜滝(りうのたき)と 云(い)へるあり恰(あたか)も竜(りう)の臥(ふし)たるか如(ごと)く覆流(ふくりう)の 懸泉(けんせん)に鱗魚(りんきよ)の勢(いきほ)ひを止(とヾ)められ岩下(かんか)の淵(ふち)に むれ居(ゐ)て鰓(あきと)を並(なら)べ鰭(ひれ)を飜(ひるか)へす偶々(たま〳〵)竜門(りうもん)の 志(こゝろざし)あれは鼻曲(はなまかり)りの異名(いめう)をとる故(ゆえ)に俗呼(ぞくよん)て 魚止滝(うをとめのたき)と云(い)ふ近頃(ちかごろ)有志者(いうしのもの)相謀(あひはか)りて魚梯(ぎよてい)を 設(まふく)るの挙(きよ)あるやに聞(き)く若(もし)此(この)挙(きよ)成(なり)なば浴場(よくじやう) に魚肉(ぎよにく)余(あま)りあらん又(また)僅(わつか)の川上(かはかみ)に児淵(ちごかふち)と云(いふ) 所(ところ)あり大石(たいせき)両岸(りやうがん)より逼(せま)りて淵底(えんてい)計(はか)り知(し)ら れす昔(むかし)或(ある)僧(そう)一人(ひとり)の児(ちご)を携(たつさ)へ入浴(にうよく)に来(きた)りて 寵愛(てふあい)浅(あさ)からず翌年(よくねん)又(また)二人(ふたり)の児(ちご)を連来(つれきた)り後(のち) の児(ちご)を愛(あい)する事(こと)いと深(ふか)かりければ先(さき)なる