翻刻
町村組合費 金一万三百十二円
雑費 金一万五千九百四十四円
(辰) 九月八日暴風
明治三二年土佐国にては数回の暴風雨に出逢ひしが其最初の七月九日の大水、八月二十
八日の未曾有の大暴風に就ては略其景況を右に録し尽したりこれにより其三回目の災たり
し九月八日の暴風に就てこれが概況を述べん
明治三十二年九月八日は朝来天候不穏にして己に昨七日以来稍気象の変を来せり其上此時
節は旧暦二百十日二百廿日の前後に当り殊に去八月二十八日未曾有の大暴風に出逢ひしか
ば人々憂惧の念猶未だ去らず心配顔にて雲行を眺め居りしに果せるかな八日の朝九時頃よ
り強雨に添ふて東北の強風吹き起こり時を追ふて風雨次第に強勢となり屋瓦を飛ばし樹枝
を折り十時前後に至りては風位徐々正北に変じて風力益加はり木を抜き屋を倒し其凄まし
き光景いはん方なかりき十二時過に至り風位西北に変じ暴雨徐ろに止みき
今回の暴風雨は中心高知以東を通過せしにや土佐国に於ては西部は左したる損害なきも東
部は孰れも重大の損害を被り前度の災厄と相待て一層の惨状を極めたり先其損害の著しか
りしは安芸郡安田、田野、中山、奈半利、吉良川、室戸、津呂、北川、羽根、甲浦、野根
等の緒村にして主として同郡に於ける損害高調査は左の如し尤こは暴風後間もなく大体の
調査をなせるものにて実際はこれに数倍せる損害ありては其説明により明かなり
一圧死者 四人 (男三人女一人)
一負傷者 十三人 (男六人女七人)
一全倒家屋及其他建物 四百五十一棟
一半倒家屋及其他建物 二百〇八棟
一大破家屋及其他建物 二千二百五十棟
一浸水家屋 四百〇五戸
一破壊船船 二十二艘
一堤防決潰 六ケ所百七十三間
一道路破壊 六ケ所九十七間
又同時に後免警察署にて取調べたる長岡郡の損害高は大に左の如し
一圧死者 女四人
一乗船の際溺死 二人
一負傷者 十八人 (男十四人女四人)
一全倒家屋 四百七十八棟
一全倒セル家屋以外建物 五百四十棟