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コレクション: STAGE2

土佐古今ノ地震 - 翻刻

土佐古今ノ地震 - ページ 5

ページ: 5

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土佐古今ノ地震       諸 言 大正二年九月一日関東大地震あり東京近傍其の災害殊に大に死傷数十万に達し惨憺 なること言語に絶す之を古今東西の記録に徴するに太古羅馬時代のポンペイ埋没の時変、 近代伊太利メツシナ海峡の震災、本邦に在りては宝永安政両度の大地震等其の歴史上有名 なる大変に比ずるに震力は兎に角災害の高は遙かに之を凌駕す実に世界記録あつて以来の 一大天災と謂べし 抑も本邦の如き火山国に於て地震の災害は絶対に之を避けくる能はず只古今の経験に徴し之 に対する用意を怠らずは即ち其の災害を幾分か減少し得るのみ葢今回の関東大震は痛く国 民の心に印象を残し今後地震の災害に対する予防に就ては研究注目を置くもの少なからざ るべし 然るに今迄に於て本邦に地震の発起したる幾回なるを知らすと雖も時を経るに及びては世 人之を忘れ地震に対する知識は案外に浅薄なり今回の時変に対する世上の報道にも直に之 を取つて近代の安政地震に比較するものあり然し安政地震は元来二回あり元年は昼地震に て西国之を感じ二年は夜地震にて江戸之を感ず然るに世上は之を混同して一地震となし今 回の大変は殆ど之に匹敵すなど速断する者あるは誤まれるも亦甚しといふべし 元来地震の知識なくして之が災害を避けんとするは難しといふべし譬へば黴菌の性質を知 らずして伝染病を避くることの難きが如し已往は追ふべからず今後に於ては日本人民は一 様に地震の知識を有せざるべからず余前年土佐の国に於て地震の沿革を取調べ嘗て之を地 学雑誌に公にしたることあり然も未だ之を世間一般に公にしたることあらず今や今回の大 変遭遇し地震智識の忽せるにすべからざるを想ひ此に一日土佐史談会に於て講演し今又世 の参考に供せん為め更に印刷に付して之を志望者に領布する事とせり 地震は恐るべし然も細かに記録を調査する時は其の由て来る所窺知し難きにあらず又海国 の地震には多く津浪を伴ふ且又数日前より海潮に狂を生じ井水に増減を感ずること等其の 例少なからず且つ一回の大震あれば地層の安定を得るまで数百千回の小震を感じ海潮も亦 一二年間静止せず然れば大地震後の余震高潮は恐るゝに足らず是れ皆地震研究上より獲る 動かし難き経験なり土佐一国の記録を見るのみにても猶十分に之を証明し得べし何ぞ況ん や全国古今東西の記録に於て之を徴すをや其の様々の経験猶ほ此の以上に及ぶは余の喋々 を待たざる所とす 偖て本稿は余が前年起草せしものに多少の改竄を試む文字稍練を欠ぐも達意を主とし潤色 を加へず明治三十二年の大暴風は地震とは異なるも四大地震に次ぐ大天災なれば是又末世