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コレクション: STAGE1

弘化丁未天變日記 - 翻刻

弘化丁未天變日記 - ページ 30

ページ: 30

翻刻

全身創を蒙らけるは軽しそか中に御堂山門のみ依然として 立てるはさすかに仏力の加護也と浮屠輩のほこり願なるも 予ハ信をす衆生済度の本願目前の苦を救ふ事あたはす 御時に千万の人命を促しはつかに一宇の堂をおしむまた何の 心そや善光寺を去事三里計り小市の渡しありまた二三里 をのほりて名たゝる久米路の橋をわたす此あひたすへて 両辺翠屏層したる中に虚空蔵岩倉の両山飛んて 河水に陥り激流を絶つて下流に一滴をもらさす湖水の ことく積水漸々に山中拾参ヶ村を浸す山中ハ松代矦の 【参=三:異体字の叅を使用ヵ】 領地也国矦困民を恵む事厚しされとも天変の災人力 の給ふ所ならす地理をはかるに漸々余災松本に至らん事を 怖れ松本矦もまた厳にその備へありとそ此下流をうくる 人民も此積水不時にをし参らハ防くに術なからん事を怖れ 家々戸々貴賤を選ハす山手の方へ遁れ行く国矦も妻女山に 野陣を張つて不時の難を避んと構らる矦また往来の旅人 を危ふみ吏を出して厳に是をとめしむ矦長臣に命して 不時の激水を防くに残間なる所を見積り百千の人夫をもて 数丈の土手を築くまた炮火台を所々において積水不時の 変動を遠近に伝へんと構ふかくて数日を経れとも成り湛 ゆるハかんにおふ犀川の激流拒むハ虚空蔵岩倉の巖岳なり