翻刻
に均(ひと)しからずといへども、その中数(ちうすう)を算(さん)するに、
二至(じし)|線内(せんだい)の地(ち)は雨(あめ)を降(くだ)す事|多(おほ)く、両極(りやうきよく)の方(はう)に趣(おもむ)
けば其|量(りやう)漸(やうや)く減(げん)ず、しかれども雨(あめ)の量(りやう)は啻(ただ)緯度(いど)
の高低(こうてい)に関(くわん)するのみにあらず、また地(ち)の高卑(こうひ)、樹(じゆ)
木(もく)も有無(いうむ)に係(かゝ)る、即(すなは)ち地(ち)の高処(こうしよ)及(およ)び樹木(じゆもく)はよく
湿気(しつき)を牽引(けんいん)すればなり、故(ゆゑ)に高(たか)くして且(かつ)樹木(じゆもく)繁(はん)
茂(も)せる地(ち)には、平坦(へいたん)にして荒蕪(くわうぶ)せる地(ち)より雨(あめ)を
降(くだ)する多量(たりやう)なり、雨(あめ)の量(りやう)また風(かぜ)に関(くわん)す、風(かぜ)もし洋(やう)
上(じやう)より来(きた)る時(とき)は、多量(たりやう)の水蒸気(すいしやうき)を搬運(はんうん)し、海浜(かいひん)若(もし)
高地(こうち)あるか、或(あるい)は深林(しんりん)密樹(みつじゅ)のあるあらば、水蒸気(すいしやうき)
牽引(けんいん)して雨(あめ)其地(そのち)を湿(うるほ)す、此|理(り)に依(よつ)て沿海(えんかい)の地(ち)と
内地(ないち)と、常(つね)に雨(あめ)の多少(たしやう)較著(かくちよ)なる差異(さい)を為(な)すなり
雨候(うこう)
赤道(せきどう)より十|度(と)以内(いない)の地(ち)一年(いちねん)の間(あいだ)に二回(にくわい)の雨候(うこう)
と、二回(にくわい)の旱候(かんこう)あり、しかれども其|他(た)二至(じし)線内(せんない)の
地(ち)は、一|回(くわい)の雨候(うこう)と、一|回(くわい)の旱候(かんこう)あり、雨候(うこう)は短(みぢか)く
は四月(よつき)長(なが)くは六月(むつき)に至(いた)る、この他(た)の時(とき)は絶(たえ)て雨(あめ)
の降(くだ)る事なし、夫(それ)雨候(うこう)の雨(あめ)を降(くだ)すや、大約(だいやく)午時(ごじ)に