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コレクション: みん翻のみこしちゃん

化物見越松 : 2巻 - 翻刻

化物見越松 : 2巻 - ページ 4

ページ: 4

翻刻

こゝにたんばの くにの山おくに としひさしく すみており〳〵 ははこねから こつちへもかほ だしをして おこさまがた 御ぞんじの おじいあり きんねんは すたりもの にて人にこは がられも せねども 又しいて 何そおもい つきをして こはがられやう でもなし むかしからの もゝん ぐわアと なもあら ためず ひそまり くらしけるが そのころたん ばの山おくに きたりすむ ゆふれいあり いつしかこの もゝんぐわア とふかきなか となりたがい にこゝろの たけをあか しやいし のび〳〵に あいてつい にこのゆふ れいどふ やらおなかゞ おかしい やふだと  いふくらい     なり 〽たとへこのみはきゆるとも   いきるともおまへと    いつしよおねんぶつでも     うかまぬじやうぶつ      せぬふびんと        おもふて下          さんせ 〽あしの ねへかはり     に とんだ てのある ちくせう    めだ 〽りやうてんの かんざしが ほしいとも  おもわず ごまいかさねを はかふでもなし こんなとくな にようぼうが あるものか そしてないものは ひさから下  そのうへは   なんでも    あり      さ

現代語訳

ここに丹波の国の山奥に年久しく住んでいる、箱根から顔を出しているお化け様方もご存知の爺がいる。近年は流行らないもので人に怖がられもしないが、また特に何か思いついて怖がられようというわけでもない。昔からの魍魎(もうりょう)という名もあらためず、ひっそりと暮らしていたが、そのころ丹波の山奥にやって来て住む幽霊がいた。いつしかこの魍魎と深い仲となり、互いに心の丈を明かし合い、のびのびと愛し合って、ついにこの幽霊はどうやらお腹がおかしいようだと言うくらいになった。 「たとえこの身は消えるとも、生きるとも、お前と一緒にお念仏でも浮かばない成仏しない不憫だと思って下さんせ」 「足の代わりにとんだ手のある畜生だ」 「両天の簪が欲しいとも思わず、五枚重ねを履こうでもなし。こんな得な女房があるものか。そしてないものは久しいから、その上は何でもありさ」

英語訳

Here in the mountains of Tanba Province lives an old goblin who has dwelt there for many years, known even to the spirits who show their faces from Hakone. In recent years, he has become unfashionable and is no longer feared by people, though he doesn't particularly try to devise ways to frighten them either. Without changing his ancient name of "mōryō" (demon spirit), he lived quietly. Around that time, a ghost came to live in the mountains of Tanba. Eventually, this ghost and the mōryō became close, revealing their innermost feelings to each other and loving freely, until finally it seemed the ghost's belly had grown strange. "Even if this body should vanish or live on, please pity us as unfortunate souls who cannot achieve salvation or recite nembutsu together with you." "What a creature with hands instead of feet!" "I don't desire the hairpins of heaven, nor do I wish to wear five layered robes. Could there be such an advantageous wife as this? And since what we lack has been absent for so long, anything goes now."