翻刻
《ルビ:斯|かく》る《ルビ:禍|わざは》ひに《ルビ:遇|あ》ひぬる事《ルビ:天然自然|てんねんしぜん》とも《ルビ:謂|いゝ》つべし
○《ルビ:水難|すいなん》の《ルビ:相免|さうまぬ》がれざる話
《ルビ:爰|こゝ》に《ルビ:志州鳥羽|ししうとば》《ルビ:御城下|ごじやうか》の《ルビ:片辺|かたほと》りに《ルビ:某|なにかし》の《ルビ:院|いん》といへる
《ルビ:真言宗|しんごんしう》の寺ある《ルビ:下男|げなん》《ルビ:毎朝|まいあさ》《ルビ:墓原|はかはら》の《ルビ:掃除|さうじ》をな
すに《ルビ:或苔|あるこけ》むしたる《ルビ:五輪|ごりん》の《ルビ:石碑|せきひ》の《ルビ:辺|ほと》りに《ルビ:長|なが》き
《ルビ:髪|かみ》の《ルビ:毛|け》地中より《ルビ:生出|おひいづ》るを切取事《ルビ:時々|とき〳〵》也いつ
とても《ルビ:不思議|ふしぎ》のとのみおもひながら《ルビ:別|べつ》に人
にも《ルビ:咄|はな》さゞりしに《ルビ:去|さんぬ》る十一月三日《ルビ:例|れい》のごとく《ルビ:墓原|はかはら》
の《ルビ:掃除|さうじ》をなすに《ルビ:彼|かの》五《ルビ:輪|りん》の《ルビ:本|もと》にいつよりも《ルビ:余計|よけい》
に《ルビ:髪|かみ》の《ルビ:毛|け》《ルビ:生出|をひいで》はりしかば《ルビ:余|あま》り《ルビ:奇異|きい》におもひ
此よしを申により《ルビ:住僧|ぢうそう》を《ルビ:始|はじ》め《ルビ:沙弥等|しやみら》もともに
《ルビ:五輪|ごりん》の《ルビ:傍|そば》にいたり見れは《ルビ:下男|げなん》の申すにたかはず
いかにも《ルビ:不審|ふしん》なれば五りんを《ルビ:取除|とりの》け《ルビ:堀反|ほりかへ》し見
るに《ルビ:石櫃|いしひつ》あり《ルビ:其|その》《ルビ:石櫃|かろと?》の《ルビ:蓋|ふた》の《ルビ:隙間|すきま》より《ルビ:髪|かみ》の