翻刻
たゝきて痒かりなきやうにする也といへり此国の物語も
かうやうの事よりいひあたるなるへし
安政乙卯仲夏謄写追加亦畢 古風堂老人
因云通鑑網目《割書:総計百|十巻》書地震一百十書山崩二十
六書大水六十三云々
〇上巻巷談拾遺
甲殿の海岸に鎮りまします住吉明神の御神徳は申もな
か〳〵おそろなる事なから去冬の大変敷地の者ともは誰いふ
とはなけれとも神院にや兼而より沙汰しけると也扨十一月五日大
震後の高潮最初は程無打入間もなく引取川も入江も暫く
干潟と成けれは其隙に最初の足胸まても残らす山丘に登り怪我
過せし者一人もなかりしと也御社の西のホケと云所にいたく人家有
尤此所は至て低き海辺なれは漁師とも家財をも打捨山上に遁れ
見渡す処南海よりは山のこときの高波打来る事あまたたひなるに
ふしきなる哉御社の仲にいたれは忽東西に分れ此ホケの窪所も
恙なかりしと也又奇端なる事は御社内陣の扉には平日
錠を差堅めしにおのつから開て有しを鍵取長者といふ者見