翻刻
浴法(よくはう)に就(つ)いては三|箇(か)の禁戒(きんかい)あり第一には淫(いん)
事(じ)を深(ふか)く洩(もら)す事第二は大酒(たいしゆ)飽食(あくしよく)をする事第
三は身(み)に勝(すぎ)たる力業(ちからわざ)及び口論(こうろん)腹立(はらたち)をする事
以上(いじやう)此等(これら)の事(こと)犯(おか)す時(とき)に於(をい)ては浴用(よくよう)に反(はん)して
甚(はなは)だ害生(がいしやう)すべし故(たるがゆへ)に被(か)の戒(いま)しめあり深(ふか)く恐(おそ)
れ慎(つゝしま)ざるべけんや
《箱:第八》
浴治中(よくぢちう)四五日|乃至(ないし)一|週回(しうくわい)も過(すぎ)し頃(ころ)踏刺(ふみさし)打撲(うちみ)
折傷(をりきづ)或は脚下(かつけ)僂麻質私等(りうまちすとう)の痛(いた)み図(はか)らず甚(はなは)だ
しく増来(ますきた)ることあり然(さ)れと決(けつ)して驚(おどろ)くべか
らず是(こ)れ則(すなは)ち温泉(おんせん)適度(てきど)のしるしなるべし
《箱:第九》
温泉(おんせん)の滝(たき)に打(うた)せて大(おほひ)に悪(あ)しき所(ところ)は頭(かしら)胸腹(むねはら)の
《ルビ:三ヶ所|さんかしよ》なり是(こ)を決(けつ)して打(うた)せべからず凡(およ)そ人(ひと)
はのぼせ引下(ひきさ)げなるとて頭(あたま)を滝(たき)に打(うた)せるは
甚(はなは)だ誤(あやま)りなり如何(いか)んとなるに循血(じゆんけつ)則(すなは)ち滝(たき)打(うち)
当(あた)る所(ところ)に寄(よ)るが故(ゆへ)に後(のち)果(はた)して頭痛(づつう)眩暈(めまい)逆上(のぼせ)
眼霞(めかす)みなとして前(まい〳〵)より禍(わざわ)ひ倍(ばい)して来(きた)るべし
又(また)胸腹(むねはら)を打(うた)せは痰(たん)を起(をこ)し両便(りやうべん)不通(ふつう)腹合(ふくがう)あし
く固疾(こしつ)の外(ほか)なる病(やま)ひを引出(ひきいだ)し種々(しゆ〴〵)の障(さわ)り出(いで)