翻刻
き山嶽(さんがく)なきに、却(かへ)つて南方(なんはう)には山脈(さんみやく)綿亘(めんたん)して、空(くう)
気(き)の寒冷(かんれい)を減(げん)ずべき温暖(おんだん)なる南風(なんふう)を界断(かいだん)すれ
ばなり、またエウロツパ洲内(しうだい)ロシヤの中央(ちうわう)及(およ)び
南部(なんぶ)は、その緯度(ゐど)に比較(ひかく)するに、寒冷(かんれい)最(もつと)も甚(はなは)だし、
是またその北方(ほつはう)に山脈(さんみやく)の連続(れんぞく)するなくして、北(ほく)
来(らい)の寒風(かんふう)を防(ふせ)がざるに帰(き)す、○第四、各地(かくち)の海(うみ)に
突出(とつしゆつ)する事(こと)と、また海(うみ)より遠(とほ)ざかる事も、気候(きこう)を
定(さだ)むる一端(いつたん)に属(ぞく)す、大洋(だいやう)の水(みづ)は大約(たいやく)常(つね)に同温(どうおん)に
して、陸地(りくち)の各地(かくち)寒暖(かんだん)均(ひと)しからざるが如くなら
ず、その己(おのれ)より温度(おんと)高(たか)き物(もの)に遇(あ)ふ時は、其|熱(ねつ)を吸(きう)
収(しう)しまた温度(おんど)低(ひく)き物(もの)に接(せつ)すれば之(これ)に己(おのれ)の熱(ねつ)を
分(わか)ちて相均(あひひと)しからんとする偏性(へんせい)あり、故(ゆゑ)に寒風(かんふう)
洋上(やうしやう)を渡(わた)れば暖(あたゝ)かにして、熱風(ねつふう)洋面(やうめん)を過(すぐ)れば冷(ひやゝ)
かなり、こゝを以て嶋国(とうこく)或(あるい)は沿海(えんかい)の地(ち)は、内地(だいち)或(あるい)
は海(うみ)より遠(とほ)ざかれる国(くに)よりも、冬天(とうてん)は気候(きこう)温和(おんくわ)
にして夏日(かじつ)また酷暑(こくしよ)あらず○第五、地(ち)の傾斜(けいしや)日(ひ)
に対(たい)する事、これまた気候(きこう)に関渉(くわんせふ)するに較著(かくちよ)な
るものなり、日(ひ)の光線(くわうせん)地(ち)を射(い)る度(ど)と、日(ひ)の熱地(ねつち)を