翻刻
ことなし凡神仏の威力(いりき)誓(せい)願に
いつれか勝(まさ)りいつれか劣(をと)るへきしか
るに此本山のみかゝる大火をまぬ
かれさせ給ふ実に不|可思議(かしぎ)の中
の不可議也其|門徒(もんとう)の偈(かつ)仰(ごう)するも
理(ことはり)なりかゝる折は同し土地(とち)なから
一日のうち|一刻(こく)の間に虚空(こくう)の
景(けい)情(せう)も斉(ひと)しからす東御本山の
燃(もへ)上る此(ころ)烈(れつ)風|頻(しきり)に吹立て遉(さすか)の大(たい)厦(か)
髙堂|一瞬(いちじゆ)に焦土(せうと)なりぬ此時市
民火災を遁んと七条の野原|畑(はた)
中へ資材(しさい)雑具(そうく)持出し戸障子
又は板なともて一仕切〳〵|囲(かこ)ひ
居たるに此|猛風(まうふう)のために戸障子
板まても大|空(そら)へ巻揚(まきあげ)られ中〳〵
野中に在事叶はす折角持