翻刻
出し諸具其侭打捨遁去りし
跡(あと)へ火移(うつ)りて 野畑に差置し品〻
一色も不残 須臾(すゆ)に灰となりし
有様も又 哀(あはれ)の中のあわれ也 此風に
まい揚し板類三里の行程(こうてい)をへ
たてし宇治あたりへ雨のふるかこと
く散(ちり)落たり其時同しく火
を遁んと黄檗(わうはく)邊へ遁延し人
あまりのこと故後日の話種(はなしのたね)と其板
を一まいひろひ取京へ持戻り人に
も見せ互(たかい)に舌(した)をまきて恐れける
まことに恐るへきの魔(ま)風ならす
やかゝりけれとも東本願寺阿弥た如来
以ての尊像(そんそう)悉(こと〳〵)く山科御坊へ故障
なく遷(うつ)し八月七日東大谷へ又
〳〵|遷座(せんざ)まし〳〵けるはめてたし