翻刻
かち怪(くはい)を語(かた)らんとにはあらす
尚(なほ)もかゝる大|変(へん)なれは人の耳目(じもく)
を驚(をどろか)すこと少からされはそはまた
後日|拾遺(しうい)して衆覧(しうらん)に備(そな)ふへし
そも〳〵右の騒動|混雑(こんざつ)に付|俄(にはか)に
出産するものも夥敷(をひただしく)医者|産婆(とりあげばば)の
穿鑿(せんさく)知らてなく漸長持などへ入て
舁(かき)出しなんなく助(たす)かるもあり
また中には其まゝ焼死るもあり或は
こしの抜(ぬけ)し人も有|熱(ねつ)病の人などを長
持へ入て持出し或は背に負(をひ)途中(とちう)
にて煙(けむ)りにまかれ死もあり 変(へん)死も
あれと引導(いんどう)十念を授(さつ)かることもなり
かたく四斗|桶(をけ)葛篭(つゝら)の類に入て
宿坊へ持込|仮葬(かりほうむり)の出来るはまたしも
なれとこれを又場所によりては住持(ちうじ)