みんなで翻刻ver1

コレクション: STAGE9

那為の後見艸 全 - 翻刻

那為の後見艸 全 - ページ 3

ページ: 3

翻刻

さへてあたりを見るにあかり障子ふすま障子はもとより 手かたくしおきし板戸まてこと〳〵くたふれ鴨居もおつる はかりにゆるき出床の間に置し小道具やうの物も座敷中 にまろひ出たるさま容易の事ともおもわれさるうち長屋 に住せし男とも両三人はせ来りて我々か部屋の壁ハ皆 おち崩れてかく埋られしとて土まみれたれさまなれハ 大に驚きさあらんには台所なといかゝ心もとなしと廊下 つたひに《割書:やつかれ此地に移住せし頃より内隠の心決しけれハ小|家をしつらゐおもやへは廊下をもて通行するゆへなり》 玄関わきをすきつるにあたりの壁ともミな崩れおちて足 入へき所もなけれはその上をからくあゆミて台所に至 るに石もてたためる出まど皆板敷の上におとり出て銅 壺釜茶かま迄かたふき倒れたりやせかれか住居如何と とひつるにいつれも怪我なく庭前にのかれ出しときはや うやく心おちつきたりおのれもし酒の助けなくして 最初の強き響きをきゝたらんに狼狽すへきにかくお くれて目さましハ僥倖なりこれらハ古人の語にたか はしと独りつふやきぬさてかゝる大地震にハゆり かへす事まゝありと聞々つれは再ひあやまちしてハ 人の笑とならんと頓て提灯取いて座鋪の中央に釣 下け蝋燭点して夜明る迄をきたり果してその後度々