翻刻
あつらへ無闇(むやみ)にきびるを自慢(じまん)がほ。大工(だいく)も透(すか)さぬ杜撰(やつつけ)
仕事(しごと)後(のち)の為(ため)を思(おも)ひやらねば。破損(はそん)すること甚(いと)はやく
風(かぜ)にかたぶき地震(ぢしん)に倒(たふ)れ難義(なんぎ)におよぶも多(おほ)かりき
又いさゝかの金(かね)をこしらへ無性(むしやう)に高(たか)ぶる成上(なりあが)り。人(ひと)を
見下(みさげ)て礼儀(れいぎ)をしらず。出家(しゆつけ)は仏(ほとけ)を看板(かんばん)にし己(をの)が栄耀(えよう)
に金(かね)をあつめ。不律不如法(ふりつふによほふ)に世(よ)を渡(わた)り。農民(ひやくしやう)は常(つね)に泣(なき)
事(こと)のみ言(いふ)て出物(だしもの)へらす魂胆(こんたん)。いづれをみても善事(ぜんじ)
はなく。身欲身(みよくみ)びいき得手勝手(えてかつて)。高(たか)きは低(ひく)きを虐(しへたげ)て
憐(あわ)れむ心更(こゝろさら)になきゆへ。低(ひく)きは高(たか)きを敬(うやま)はず。うらむ
心(こゝろ)のしば〳〵なれば。人(ひと)の陰陽和合(いんやうわがう)せず其邪気(そのじやき)おの
づと天(てん)に通(つう)じ。四時(しいし)の寒暖不順(かんだんふじゆん)となり災禍(わざはひ)こゝに
至(いた)るもの也。嗚呼此時(あゝこのとき)こゝろを改(あらた)めずんば尚(なを)いかなる
天変(てんへん)かあらん。尤(もつとも)ここに人気(にんき)なをり不仁不義(ふじんふぎ)を慎(つゝし)
みなば雨降(あめふつ)て地(ち)かたまる。乱(らん)は治(ち)の季(もと)自(をのづか)ら天地陰陽(てんちいんやう)
和合(わがう)して。四季寒暖(しきかんだん)の時候(じこう)よく。四海波風穏(しかいなみかぜおだや)かに。天(てん)
下太平五穀成就(かたいへいごこくじやうじゆ)よろこびに歓(よろこび)をかさぬべし
こころだに まことの道(みち)にかなひなば
いのらずとても かみはまもらん