翻刻
第五
此異物は千五百二十三年《割書:日本大永三|明嘉靖二年》
十一月三日に羅馬の海辺におゐてこ
れを得たり其大きさは五六歳の
小児のことく臍より上は全く人の如 【挿絵あり】
くにして唯其竪立直聳するの
みしかれども臍より以下は全く魚
のことし
《割書:按するにこれまた人魚のみしかれ|ども六物新志に牝牡二人魚をのせて》
此小人魚を畧す故にこゝに出す
第六
此異物は「ゲス子りュス」といふ人「アントウエルペン」《割書:子デルランド十|七州の一》の地
におゐてこれを見て画工をして図画せしめて世につたへ
リ其頭の状甚おそるべく二の角あり両耳長く聳へ其
他全体ハ皆急なりしかれども二の手ありこれ「イルリ井ン」の海
に於て得たる者にして此物海辺の渚上にありしを
小児ありこれを見て奇なりとして戯喜す俄にして
人集てこれを見る一舟師ありこれを捕へんと欲して
急にこれを追ふ此物走動して石に中りて身を撲
ち因て岸に跳て斃れたりといふ