翻刻
ぶ其樹の下辺に結ふ所の菓は橘柚の如くにして
髄多く液また多く清涼収歛の効あり液を搾りて酒を
醸て其味渋しこれに沙糖を加へ醸すれはすなはち美
にして飲にたへたり恰も上品の葡萄酒の如し此酒よく
心志を悦楽せしめ兼て頭痛なからしむまた此樹の
上辺に結ふ所の菓は炙りてこれを食ふに其味恰
も栗の如くにしてきはめて甘美なりよく温暖にす
るの功あり故に土人きはめて此樹を珍重す
大吻鳥の説
伯西亜(ブラシリア)国に異鳥を産す土人は呼て「トウカン」といひ和
蘭の人は「コロオト。ベッキ」と名づく《割書:和蘭?語 コロオト はなり ベッキ は |吻なり》
其大きさは鶺鴒のごとく脰は洎夫藍黄にして其め
くりは紅に胸は黄にして其他はすへて黒し此
鳥啄甚大にしてあるひは人の手掌の長さにいたる
者あり子啄の外面黄にして内は紅なり啄甚軽く
して且薄し此小鳥にしてかくのことき大
吻あるこれ最異なりといふへし
按するに坤輿外記に伯西尓(ブラシリア)喜鵲
吻長而軽与身相等空明薄如紙とある
者これにしてまた明人の訳する星
図に異雀といふ者なり