翻刻
およそ伯西児(ブラシリア)の地は珍禽異獣奇虫等きはめて多
し蜥蜴【左ルビ:トカゲ】長さ四尺に及ぶものあり黒人これを射て以て食
料とす味あしからす《割書:しかれども其一種になる者は此方の|蛤蚧と同じく大毒ありといふ》蝎の長さ
五六尺に至る者ありといふ《割書:凡伯西児の物産は予か訳する所の「ニイウホフ」|といふ人の東西紀游の中に記す故に此ことは》
《割書:多たゝ其一二を|あくるのみ》
西洋昔時より航海をなして其国を富す説
西洋にて海舶に駕して遠方の国に通したる其始は
上古の代に亜細亜洲|弗尼祭亜(ヘニシア)国の人其匡の西海より舶を発
して遍く地中海上の欧羅巴(ヨウロツパ)。亜弗利加の海辺諸国に至りて
通商交易をなすこれ彼邦に於て遠方の地に航海せし
其後欧羅巴中興の時を去る事千余年前に「テイリュス」
国《割書:また亜細亜|に属せり》の王また命して海舶を大海多島海地中
海の諸国に通商せしめて大に其匡を富せりこれ
よりして諸邦多く海舶通商は国家の益きはめて
大なる事を知て各これを務むといへどもしかれと
もみな上にいへる近海に舶行するのみにしてあへて海
外絶域の地にいたる事なしたゝ|如徳亜(ジュデア)国王|撒刺満(サロモン)《割書:如徳|亜国》
《割書:王 大味得 の子にしてきはめて名誉の王なり在位四十年にして西洋開基|二千九百六十九年に殂す周の穆王の二十三年壬寅にあたる》 【割書中のルビ:大味得ダヒツド】
の世に多くの舶を西紅海より発して遠く海外なる「オ
ヒル」国およひ他の諸国に通す「オヒル」国は気候温熱にし
て夥しく黄金を産しまた象牙孔雀獼猴等
を出し其他いたる所の諸国またみな物産豊饒の地