翻刻
より「トロヤ」城を攻破りたる時にこれを俘にして「アテ
エネン」の地に鬻きたる者なるへし蓋し此物語は我
邦勝国若くは国初の時に我邦の人|波杜瓦尓(ホルトガル)人な
どの口授によりて記せるものか或は彼邦の人の久しく
我邦に居住せる者の我邦語に通して記したる者
かなるへし物語の中に二人の士伊曽保に夢をものがたり
て壱人は夢に天に昇れりといひ壱人は夢に「インヘルノ」に至
れりと告し事有「インヘルノ」は波尓杜瓦尓国の語にて
地獄といへる義なり「ラテン」にて「インヘルナ」といひ和蘭に
ては「ヘル」といふこれ亦証とすへし又和蘭語にて
譬諭寓言を呼て「ハアべル」といふ「ハルマ」か所撰の釈辞書
「ハアべル」の注解に阨瑣百(エソぺ)か「ハアべル」《割書:寓|言》を「ヘドロス」《割書:人|名》これが訳を為と
いへる事見へたれは則これ彼邦に於ては名高き事なるへし
《割書:曽て聞く先年和蘭人西訓の伊曽保の伝を斎来る者或人これ得たり書中|の図書すべて伊曽保物語に所訳の者と同しといへり今其書いつれの所にあ》
《割書:る事を知|らす》
《割書:此ころ大浪石川君所持の古き刊本を見る末に云寛永十六年卯月吉辰とあ|りま?て某侯の藩士嘗て浅草の古書肆に於て装演して巻となす者三巻》
《割書:を購ひ得たり古き紙に金泥を散せる上に此物語を謄写す其筆|意又賤しからすと云〻しかれは此書蓋し国初の比には盛に世に行なわ》
《割書:れたりと|見ゆる也》
「コンスタンチ二ユム」帝讒言によりて賢子を失ふ説
羅馬(ロオマ)の「コンスタンチ二ユム二マグ二ユス」帝《割書:前編|に見》初めの后「ミネルヒナ」
子キリスプス」を生む后早く殂す後の后「ハウスタ」三男
一女を生む「キリスプス」長して勇猛にして賢慧な