翻刻
がごとく潮(シホ)も何方よりさして何国(イヅク)へ引と
いふ事なし凡人生れて気息(キソク)ありされ共
睡(ネム)れる時は形(カタチ)に神属(シンシヨク)せず何を以か能(ヨク)
吸(ス)はんや天地の間(アイダ)は只|一気(イツキ)のみ潮(ウシホ)の月に
応(ヲウ)ずるは陰類(インルイ)なれは也《割書:月ハ陰ナリ|潮モ亦陰ナリ》月望(ツキバウ)に
して蚌蛤盈(ハマクリミチ)月|蝕(シヨク)して魚脳減(ギヨナウゲン)ず是皆
其|類(ルイ)に従(シタガ)ふ也扨又|潮(シホ)の消息(サシヒキ)はいつも東より
さす事は其理あり夫百川(ソハクセン)の水は皆東に
流(ナカ)れ趣(ヲモム)く物なり是其|気(キ)の至(イタ)るに依(ヨツ)て也
又|東(ヒカシ)の方は地僻(ヂサガリ)なる故也|潮(シホ)は又東よりさす是(コレ)
本(モト)に帰(カヘ)るの義(ギ)也|抑(ソモ〻)東の方は卯辰(ウタツ)の位(クライ)に
して升気(セウキ)の盛(サカン)成方也|辰(タツ)は龍変(レウヘン)の
郷(キヤウ)也|是故(コノユヘ)に潮(シホ)は東(ヒカシ)に起(ヲコツ)て西海(サイカイ)に注(ソヽ)ぐ
是本に帰(キ)する理(コトハリ)也
龍宮の説
或問曰|海中(カイチウ)に龍宮城(リウグウジヤウ)といふ所あつて金殿(キンテン)