翻刻
楼閣彫刻美善(ロウカクテウコクビゼン)の荘厳(シヤウゴン)あり其中に諸の
龍魚列伍(リウギヨレツギヨ)して宮殿(クウデン)を守るといへり然れとも
海底(カイテイ)に宮殿(クウデン)のある事甚不審(ハナハタイブカシ)いか成事にや
其理を語れ
対曰|龍宮城(リウグウジヤウ)といふ事、佛書(ブツシヨ)の説(セツ)なり
《割書:法華経ニ説ク所ノ|八大龍王ノ義ナリ》未詳(イマタツマヒラカ)にせす然れ共|儒書(ジユシヨ)
の中には曽(カツ)て竜宮(リウクウ)の沙汰(サタ)なし凡|儒教(ジユキヤウ)
の本(モト)は仁(ジン)なり仁は昆虫走魚(ハウムシハシルウヲ)まても残(ノコ)す事
なし何んぞ龍宮(リウクウ)あらば遺(ノコ)す事あらんや
夫魚(ソレウヲ)は水に遊(アソ)んて水に生ず何んそ水中(スチウ)に
家(イヱ)をなさんや昔張横渠洛陽(ムカシチヤウワウキヨラクヤウ)の官(クワン)をやめ
て帰(カヘ)る程子相見(テイシアイマミヘ)て云ク久しく禮院(レイイン)にあつて
得(ウ)る事ありや対テ曰|多礼房(ヲヽタレイバウ)の検正(ケンセイ)に奪(ウバヽ)れ
て得(ウ)る事なし然れ共|数筒(イロ〳〵)の謚(ヲクリナ)又は龍女(リウニヨ)
の衣冠(イクワン)を定(サダ)め得たり程(テイ)子曰龍女の衣(イ)
冠(クワン)はいかやうにか定得たる曰ク其品〻に依て